プリンターや複合機、ブラザー工業社長「品薄状態で工場は対応に苦労」
―主力のプリンターや複合機の業況は。
「当社の製品はもともと小型・高性能で耐久性も高い個人・小規模事業所向けが主力。在宅勤務用に需要が増え、品薄状態で工場は対応に苦労している。特にインクジェットタイプは生産地のフィリピンでロックダウン(都市封鎖)があり、巻き返し中だ。密を避けるため人海戦術はとれず簡易自動化で増産をしている」
―コロナ禍の2021年をどう見ますか。
「21年は景況が回復するとみている。20年は従来にない学びの年だった。在宅勤務や訪問なしの商談、出張なしでの海外での新製品や新工場の立ち上げなどを遠隔(リモート)でやってみたらできてしまった。今年はコロナ禍を前提に、制約の中でさらに力を発揮するトライの年だ」
―コロナ禍での課題は。
「遠方との商談がリモートなら1日に3、4件できる。『できない』より『できる』前提でどう取り組むかが大切。バーチャル展示会も経験したが、新規顧客の獲得が難しく今後のテーマだ。コロナ禍ではサプライチェーン(供給網)の維持が難しいことも学んだ。設備投資の基準を緩和し、トナーなどの消耗品の生産を先進国の工場などにも分散していく。不測の事態に個々が機敏に対応できる人の育成も重視している」
―産業機械の受注状況は。
「工作機械は長く低迷していた需要が中国を中心に回復傾向。得意の小型の加工対象物(ワーク)向けに加え、中大型ワークへの対応も強化中だ。工業用ミシンはアパレル業界向けが低迷し、アパレル以外の用途を開拓する。産業用の大型印刷機は飲料向けなどの投資姿勢が慎重だが、消耗品は堅調だ。物流業界向けなど品ぞろえも増やしている」
―他事業の状況は。
「家庭用ミシンは巣ごもり需要で好調。日本では30万―40万円の高級ミシンが品切れだ。カラオケ事業はコロナ禍で苦労しているが、この機会にどこまでコストを下げられるかに取り組む」
記者の目/動きが速い会社づくり
22年3月期に売上高7500億円、営業利益750億円を目指す中期経営計画に対し、21年3月期予想は売上高6000億円、営業利益535億円。しかし、佐々木一郎社長は業務効率改善、社員の意識改革で「筋肉質の動きが速い会社づくり」を進め、手応えも感じている様子。業績への反映も近そうだ。(名古屋編集委員・村国哲也)