検出確率は90%超、東大が「肝がん」判別するセンサーが作製
東京大学大学院情報理工学系研究科の竹内昌治教授らは、ヒトの呼気に含まれる0・5ppb(ppbは10億分の1)という低濃度の肝臓がんのバイオマーカー(目印)を小型のにおいセンサーで検出することに成功した。蚊の触角にある、におい分子を感知するたんぱく質「嗅覚受容体」を組み込んだセンサーデバイスに、におい分子を効率的に取り込む機構を新たに作製。溶け込み量を従来比約4倍、検出確率を同6倍強の90%超に高めることで実現した。今後、企業との協業も視野に入れ研究を重ねる。
竹内教授らはこれまでに蚊の嗅覚受容体を用いたにおいセンサーを開発。細胞膜を模擬して人工的に作製した「人工細胞膜」に蚊の嗅覚受容体を組み込んだにおいセンサーが、水溶液に溶解したにおい分子に対して高い感度と分子識別能力を持つことを見いだしている。だが、におい分子の多くは水に溶けにくい性質を持つため、空気中に漂うにおいに対して嗅覚受容体本来の能力を引き出せなかった。
そこで、新たにセンサーデバイスを作製した。効率的ににおい分子を水溶液中に溶け込ませるため、水溶液の真下に微細なスリットを配置。ここからにおい分子を含む気体を送り込むことで水溶液が撹拌(かくはん)され、効率良くにおい分子を嗅覚受容体に送り届けることが可能になった。肝臓がんのバイオマーカーを含む気体を送り込むと、約4倍の濃度を溶解できた。
神奈川県立産業技術総合研究所との共同研究。
日刊工業新聞2020年1月18日