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村田製作所は一日にして成らず(13)加速してきたM&A

岐路に立つ「にじみだし戦略」
**地盤固め強く
 ここ10年間で村田製作所が実施したM&A(合併・買収)は14件に上る。特に2008年以降は毎年2件以上のハイペースで実施している。同社がM&Aを加速させるのは、勢いを増す海外部品メーカーへの対抗策として有力な選択肢となるためだ。社長の村田恒夫もM&Aをテコに「新興メーカーに対抗できる製品を作っていかなければ」と力を込める。

 村田製作所のM&A戦略は、しばしば「にじみだし」と称される。飛び地をつくるのではなく、周辺領域での技術獲得や販路拡大に主眼を置いている。最近では13年2月に東光と東京電波の子会社化を発表。スマートフォンや自動車向け部品のさらなる地盤固めに乗り出した。

 「(村田の)マーケティング力と販売ネットワークは素晴らしい」。東光社長の川津原茂は、資本受け入れが間違っていなかったことを実感する。すでに、コイル部品などを村田の販売網に乗せて販売。販路は確実に拡大している。村田は東光への出資比率を、現在の15・88%から66・20%まで引き上げる方針で、川津原も「連結子会社になることで、いろいろな制約がはずれ戦略がとりやすくなる」と期待する。

 M&Aでも堅実さが際だつ村田製作所。副社長の藤田能孝は「まずは経営理念や経営管理の仕組みを最初に浸透させることが重要」と成功率を高めるための条件を説明する。過去の買収案件では経営を相手に一任したこともあった。だが自社からトップを送り込んで意思統一を図ったほうが「相乗効果を生み出しやすい」(藤田)という結論に至った。

時間かけずに


 完全子会社化した東京電波のトップにも、村田出身の坂本秀夫を据えた。坂本も「仕事の流れや管理システムなどすべての仕組みを統一するのは大変。時間をかけずに思い切ってやらなければならない」と話す。

 最近の村田のM&Aの動向を読み解くと、体力のないメーカーが淘汰(とうた)される構図が透けて見える。すでに日本企業同士で争う意味は薄れているのかもしれない。

 村田に課された使命は買収企業とのシナジーを最大限に創出し、日本のモノづくり力を世界に改めて示すことにほかならない。(敬称略)
日刊工業新聞2014年03月06日 電機・電子部品・情報・通信
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
村田製作所のM&Aは、隣接領域にじわじわとにじみ出していく堅実さが特徴だ。このことが現在のスマートフォン市場での実績につながっていることは間違いない。ただスマホ依存から脱するためには「自動車」「医療・ヘルスケア」「エネルギー」といった新分野の攻略が欠かせない。そこでは、もっと思い切ったM&Aを仕掛けていく必要があるだろう。

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