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「日本経済の低迷は中小企業の生産性が起因」ってほんと?アトキンソン氏に反論する

都内の地場企業を取材していたころ、名刺を差し出すと怪訝(けげん)な顔の経営者がいた。「中小企業部かぁ。うちは躍進企業部に取材してほしいな」。規模で企業価値を判断するな、と相手は言いたげだった。

「日本経済の低迷は中小企業の生産性に起因する」との元金融アナリスト、デービッド・アトキンソンさんの主張が話題になっている。生産性の低い小規模企業を整理統合し、企業規模を拡大することが有効と説く。

著書で「高い技術を有する社員はもっと規模のある会社で、恵まれた環境で能力を目いっぱい発揮したほうが良い」と記す。もっともらしい主張だが、果たしてそう思う人ばかりだろうか。

政府の成長戦略会議は中小企業の生産性向上を巡って検討している。アトキンソンさんのM&A(合併・買収)促進の声に、日本商工会議所会頭の三村明夫さんは「小規模事業者の減少は都市への雇用流出、地方の衰退を加速させる」と反論する。

企業の多くは規模を問わずコロナ禍に苦しむ。経済再生か感染防止か線引きが難しい時期に、再編の議論は性急すぎる。大都市から離れるほど、中小企業は重要な雇用の受け皿。まずは切実な経営者たちの声に耳を傾けてほしい。

日刊工業新聞2020年11月27日

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