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2021年度の税制改正大綱を解説。脱炭素・DXがキーワード

2021年度の与党税制改正大綱が10日決定した。脱炭素化に向けた投資、デジタル変革(DX)、中小企業の競争力向上、企業の内部留保を投資に振り向ける促進策を柱とした。燃費性能に応じて自動車重量税を減免するエコカー減税では、クリーンディーゼル車などを除外するが、経過措置を設ける。新型コロナウイルス感染症により打撃を受けている企業や個人向けに、固定資産税の負担増抑制も図る。

新たに創設する「DX投資促進税制」は、クラウド化などのデジタル環境を構築する際に、税額控除(最大5%)か特別償却(30%)ができる措置で、民間企業によるデジタル関連投資を促進する狙いがある。「カーボンニュートラルは今から技術革新に大きく舵(かじ)を切らないと間に合わない」(甘利明自民党税調会長)と、脱炭素化などへ投資する企業に対しては、5年間、繰越欠損金の控除限度額を最大100%まで可能とする特例を新設する。

エコカー減税については現在、20年度燃費基準をどの程度上回っているかによって、減税幅が決まっている。21年度税制改正では現行より厳しい燃費基準に切り替え、クリーンディーゼル車については一定の燃費基準を満たす車種に限り、現在の税制優遇措置を継続する。制度改正による国内自動車メーカーへの影響を考慮した。

21年度が3年に1度の評価替えの年に当たる固定資産税については、評価替えに伴い課税額が上昇する土地は商業地だけではなく、住宅地や農地も含めた全ての地目で、前年度の税額に据え置く。新型コロナの感染拡大により企業や個人の税負担を和らげる。

住宅ローン減税では、適用期間を通常の10年より長い13年としている措置に関し、原則20年末までと設定している入居期限を22年末まで延長。経済対策として、合計所得金額1000万円以下の人について、面積要件を緩和する。住宅購入にかかる税の優遇を図ることで、住宅市場が底割れするのを防ぐ。

◆大きな効果は見込めず 大和総研シニアエコノミスト・神田慶司氏

今回の税制改正大綱は、やるべきことは盛り込んでいる。住宅ローン減税、エコカー減税関連のように波及効果が大きい分野に取り組み、家計負担を抑えることで、景気を回復させたい意図を感じる。だが、新型コロナウイルス感染症の収束が不透明な中で、大きな効果は期待できないのではないか。

脱炭素化に向けた設備投資への減税については、後押しにはなるが、効果は未知数だ。企業も世界の脱炭素化の潮流は理解している。ただ、当社は2021年度の民間設備投資は20年度より2・5%増になると予測するが、水準は高くない。20年度は19年度より8・0%減とみている。企業は新型コロナの収束が見通せない中、設備投資に慎重だ。(談)

◆穏当な内容に落ち着く 日本総合研究所調査部主任研究員・蜂屋勝弘氏

今回の税制改正大綱は、穏当なところで落ち着いたという印象だ。コロナ禍の厳しい経済環境下にあって、全体としては負担減を打ち出した格好だ。社会の中長期のあり方を変えようとする脱炭素や、企業が急いで取り組むべきデジタル変革(DX)などを誘導する内容ともなっている。中小企業の事業承継の円滑化などは、事前に特に注目していた点だ。

本来であれば法人税のあり方や、個人所得のあり方といった内容まで盛り込まれても良かったのだろう。しかし、そこまで踏み込めば大規模な改正となってしまう。今はいわば緊急事態にあるだけに、早急にやる必要はないだろう。

これらの点で来年度以降、もう少し踏み込んだ改正を期待したい。(談)

日刊工業新聞2020年12月11日

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