ノーベル生理学医学賞に続け!「微生物ダークマター」研究
拓く研究人(95)海洋研究開発機構主任研究員・井町寛之氏(40歳)
我々の身近には目に見えない細菌やカビなどの微生物がひしめきあっている。今年のノーベル生理学医学賞に選ばれた大村智北里大学特別栄誉教授の受賞テーマは、土壌にいる微生物が作る有用物質によるものだった。だが、こうして知られている微生物は微生物全体の1%ほどにすぎない。陸や海には多くの未知の微生物が存在し、近年では「微生物ダークマター」と呼ばれている。
こうした未知の微生物を探索するのは、海洋研究開発機構の井町寛之主任研究員だ。井町研究員は海底探査の際に採取した泥の中の微生物を培養できる装置を開発し、培養が難しいと言われた微生物を次々に培養した。「DNAが分かっていても培養できないため、実物を見られない微生物はたくさんいる。多くの未知の微生物を培養し、まだ知られていない生物の仕組みを発見したい」と将来の目標を語る。
1996年、徳山工業高等専門学校(山口県周南市)から長岡技術科学大学に編入。排水処理の研究をしていた原田秀樹教授(現東北大学教授)の研究室に入った。
ここから15年以上に及ぶ微生物研究が始まる。修士課程の時に培養が難しい微生物の解析を研究テーマとして与えられた。困難な研究だったが根気よく続け、始めて1年半くらいからデータが出て修士論文を完成させた。その後、博士号を取得。助手として研究を続け、「培養が難しい微生物を培養できる」という高い評価を学会で受けるまでになった。
06年に海洋機構の研究員として着任。それと同時に、難培養用微生物装置の開発に着手した。「長岡技術科学大での経験もあり簡単にできる」と思っていた。だが意外に手こずり、結果が出るまで1年半かかった。「プロの研究者として早く結果を出そうと焦っていた。装置内部で培養したメタン生成菌によるメタンの発生を確認した時は感動した」と振り返る。
7月には石炭を食べメタンを放出する微生物を発見した。「微生物で低品質の石炭をガスに変え、高品質なエネルギー源にできれば工業化できるかもしれない」と、科学的な好奇心を満たすだけでなく、産業に関わる分野の研究にも貢献していく考えだ。
(文=冨井哲雄)
こうした未知の微生物を探索するのは、海洋研究開発機構の井町寛之主任研究員だ。井町研究員は海底探査の際に採取した泥の中の微生物を培養できる装置を開発し、培養が難しいと言われた微生物を次々に培養した。「DNAが分かっていても培養できないため、実物を見られない微生物はたくさんいる。多くの未知の微生物を培養し、まだ知られていない生物の仕組みを発見したい」と将来の目標を語る。
1996年、徳山工業高等専門学校(山口県周南市)から長岡技術科学大学に編入。排水処理の研究をしていた原田秀樹教授(現東北大学教授)の研究室に入った。
ここから15年以上に及ぶ微生物研究が始まる。修士課程の時に培養が難しい微生物の解析を研究テーマとして与えられた。困難な研究だったが根気よく続け、始めて1年半くらいからデータが出て修士論文を完成させた。その後、博士号を取得。助手として研究を続け、「培養が難しい微生物を培養できる」という高い評価を学会で受けるまでになった。
06年に海洋機構の研究員として着任。それと同時に、難培養用微生物装置の開発に着手した。「長岡技術科学大での経験もあり簡単にできる」と思っていた。だが意外に手こずり、結果が出るまで1年半かかった。「プロの研究者として早く結果を出そうと焦っていた。装置内部で培養したメタン生成菌によるメタンの発生を確認した時は感動した」と振り返る。
7月には石炭を食べメタンを放出する微生物を発見した。「微生物で低品質の石炭をガスに変え、高品質なエネルギー源にできれば工業化できるかもしれない」と、科学的な好奇心を満たすだけでなく、産業に関わる分野の研究にも貢献していく考えだ。
(文=冨井哲雄)
日刊工業新聞2015年10月28日 科学技術・大学面