「自動車素材」軽量化競う(上)鋼材を浸食するアルミ
フォードがドル箱のピックアップにアルミ合金採用。日本の鉄鋼各社出遅れ
30日から一般公開が始まる「第44回東京モーターショー」。コンセプトカーをはじめ、最新の自動車が華々しく展示される。その裏側では素材を提供する鉄鋼やアルミニウム、化学、繊維業界などによるつばぜり合いが繰り広げられている。車メーカーが年々、より低燃費で環境負荷の低い「エコカー」への比重を増しているだけに、特に素材の軽量化競争が過熱している。
【ライバル心】
「強度なら鉄はアルミの3倍。車に乗っている人を守ることも大事で、一概に軽量化の一言だけで片付けられない」。ある鉄鋼大手の首脳はこう言って、軽さを訴える他素材へのライバル心をむき出しにする。
車メーカーの軽量化ニーズを受けて、自動車に占める鋼材の使用比率は年々下がり続け、アルミがじりじりと浸食する。足元ではこれまでのフードからトランク、ドアなどへ適用部位が拡大。高級車やエコカーを中心に採用を増やしている。
特に最大の市場である米国では企業別の平均燃費規制で、自動車メーカーも基準値をクリアすることが求められ、アルミの出番がますます増えると見込まれている。自動車パネル用アルミ材の需要が2020年には今の数倍の100万トンまで増加するとの予測まである。それだけに鉄鋼大手関係者は「米国では軽量化のためにハイテン(高張力鋼板)よりアルミを使おうという機運が強い」と危機感をあらわにする。
【強度30%高く】
実際、米フォード・モーターは米アルミ大手アルコアの高強度アルミ合金をドル箱車種であるピックアップトラック「F―150」の部品に採用することを決めた。アルコアは自動車部品向けアルミ合金の新製法「マイクロミル」を開発。従来のアルミ部品に比べ、強度が30%高く、加工性も約40%改善されたことから、ドアの内側パネルやフェンダーなどを鋼板並みに成形できるとして、その代替を目指している。
これに対し、日本の鉄鋼大手はやや出遅れており、巻き返しが大きな経営課題だ。新日鉄住金はアルセロール・ミタルとの合弁工場で引っ張り強度120キログラム級の超ハイテンの生産を決めたが、立ち上げは17年になる見通し。JFEスチールはまだ検討段階にとどまる。
最も先行する神戸製鋼所は、米USスチールとの合弁工場で超ハイテンの生産を開始。日系カーメーカーを中心に、納入へ必要な品質などの認証も取得した。ところが、ちょうど車種のモデルチェンジの端境期に当たったこともあり、納入開始はもう少し先だ。
【急速に存在感】
鉄とアルミの攻防は正念場を迎えているが、そこに割って入ろうと急速に存在感を増しているのが炭素繊維。そこに活路を見出そうとしているのが、これまでも軽く安価な樹脂素材を供給してきた化学メーカーだ。
【ライバル心】
「強度なら鉄はアルミの3倍。車に乗っている人を守ることも大事で、一概に軽量化の一言だけで片付けられない」。ある鉄鋼大手の首脳はこう言って、軽さを訴える他素材へのライバル心をむき出しにする。
車メーカーの軽量化ニーズを受けて、自動車に占める鋼材の使用比率は年々下がり続け、アルミがじりじりと浸食する。足元ではこれまでのフードからトランク、ドアなどへ適用部位が拡大。高級車やエコカーを中心に採用を増やしている。
特に最大の市場である米国では企業別の平均燃費規制で、自動車メーカーも基準値をクリアすることが求められ、アルミの出番がますます増えると見込まれている。自動車パネル用アルミ材の需要が2020年には今の数倍の100万トンまで増加するとの予測まである。それだけに鉄鋼大手関係者は「米国では軽量化のためにハイテン(高張力鋼板)よりアルミを使おうという機運が強い」と危機感をあらわにする。
【強度30%高く】
実際、米フォード・モーターは米アルミ大手アルコアの高強度アルミ合金をドル箱車種であるピックアップトラック「F―150」の部品に採用することを決めた。アルコアは自動車部品向けアルミ合金の新製法「マイクロミル」を開発。従来のアルミ部品に比べ、強度が30%高く、加工性も約40%改善されたことから、ドアの内側パネルやフェンダーなどを鋼板並みに成形できるとして、その代替を目指している。
これに対し、日本の鉄鋼大手はやや出遅れており、巻き返しが大きな経営課題だ。新日鉄住金はアルセロール・ミタルとの合弁工場で引っ張り強度120キログラム級の超ハイテンの生産を決めたが、立ち上げは17年になる見通し。JFEスチールはまだ検討段階にとどまる。
最も先行する神戸製鋼所は、米USスチールとの合弁工場で超ハイテンの生産を開始。日系カーメーカーを中心に、納入へ必要な品質などの認証も取得した。ところが、ちょうど車種のモデルチェンジの端境期に当たったこともあり、納入開始はもう少し先だ。
【急速に存在感】
鉄とアルミの攻防は正念場を迎えているが、そこに割って入ろうと急速に存在感を増しているのが炭素繊維。そこに活路を見出そうとしているのが、これまでも軽く安価な樹脂素材を供給してきた化学メーカーだ。
日刊工業新聞2015年10月27日 素材