新型「ノート」をHV専用車にした日産の大勝負。もし売れなければ…
小型車「ノート」の新型車を12月23日に国内で発売する日産自動車。全面改良は8年ぶり。従来のガソリン車を設定せずに、独自技術「eパワー」を搭載したハイブリッド車(HV)専用車とした。強みの電動化と運転支援技術を磨き、仏ルノーとの協業効果も取り込んで商品力を高めた。反転攻勢をけん引する主力車種として、日産再生のカギを握る。
「(新型ノートで)確実に日本で成功を収めることが、日産の電動化への道を確固たるものにする」。星野朝子日産副社長は24日のオンライン発表会で強い期待を示した。
2017年から3年連続で国内の小型車販売台数1位となったノート。その躍進を支えたのがエンジンを発電のみに使い、モーターで駆動するeパワーだ。新型車ではエンジンやモーターなどで構成するシステムの設計を一から見直し、第2世代として刷新した。
こだわったのは電気自動車(EV)に近い上質な走り。最大トルクや出力をそれぞれ従来比10%、6%向上し、加速性能を高めた。またホイールの回転センサーから路面の状態を把握。路面が粗く走行音が大きい道になるとエンジンを始動して発電する世界初の制御技術を開発し、エンジンの作動音を感じさせない静かな走りも実現した。
高速道路で先行車を自動追従する運転支援技術「プロパイロット」では、ナビゲーションシステムとの連携機能を追加。ナビの地図情報を元にカーブでの減速を支援し、制限速度に応じて自動で設定速度を切り替えるなど利便性を高めた。
車台も刷新して、ルノーと開発した共通車台「CMF―B」を日本で初めて採用。超高張力鋼板(ハイテン材)を要所に配して車体剛性を同30%高めるなど、車の取り回しも良くした。同車台は既に日産の「ジューク」やルノーの量販車「クリオ」などで採用。走行実験を繰り返すなど協業(アライアンス)で磨き上げており、開発費削減にも貢献した。シートの骨格などでも設計を共有。同じ車台を採用した車種との供用率を半分程度に高めた。
今後の展開を含めCMF―Bを採用する車種の販売はアライアンスで200万台規模も見込まれる。部品の共用による量産効果も取り込み、消費税込みの価格を202万9500円からに抑えた。月平均8000台の販売を目指す。
小型車は国内販売で上位を占める激戦区。トヨタ自動車は「ヤリス」、ホンダは「フィット」を2月に全面改良し、ガソリン車とHVを併売する。ノートはHVに絞り経営資源を集めて勝負する。
日産は23年度までの中期経営計画を5月に策定。固定費圧縮など身をかがめる戦略では成果も出始めた。一方、電動化と自動運転技術で差別化し、eパワーなどを世界展開して23年度までに年100万台以上の電動車の販売を目指す攻めの方針も示した。国内最量販車となるノートの売れ行きは、日産復活をも占う試金石となる。
(取材・西沢亮)