未来を開く熱き若手の声生かせ!「コロナ後」描く科学技術政策はどんな目標に?
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で社会情勢が変化した。それをきっかけに、政府は大胆な発想に基づく挑戦的な科学技術政策「ムーンショット型研究開発制度」の八つ目となる新目標を設置する。科学技術振興機構(JST)が新たな目標案の検討に向けて、今後の時代を担う若手中心のチームを公募。2050年の社会像とそれを達成するためのアイデアなどを提案し、新型コロナ後の世界を見据えた将来のあるべき姿を議論する。(取材=飯田真美子)
ムーンショット型研究開発制度の運用と評価指針は、社会環境の変化や科学技術の進展などに応じて目標の追加や変更などを行うと定められている。新型コロナの影響で今後も社会経済の姿が大きく変わると想定される。日本の将来像や研究開発のあり方などの再考が必要と判断され新目標の設置が決まった。
【複雑な課題解決】
新目標は新型コロナの治療薬やワクチンの開発など直接的な目標に限らず、間接的な内容でもよい。例えば、新型コロナ拡大の影響で閉鎖空間で過ごす時間が増えたことで発症が増加した、うつ病や不安障害に対する課題解決などでもよい。このような社会経済の複雑な課題解決のための目標検討には、柔軟で自由なアイデアを持つ人材が必要となる。
そこで、八つ目の新目標の検討には、科学技術で未来を切り開く熱意とやり抜く志を持った若手研究者を発掘・育成し、30年後の未来社会を創造するビジョン公募枠「ミレニアム・チャレンジ」を使った。目標検討チームには研究者だけでなく、ダイバーシティー(多様性)に配慮しさまざまな分野や組織の人材で構成することが望まれている。
JSTの浜口道成理事長は「地球規模の危機を機に、真に望む社会のためのアイデアを多面的・多角的な視点で若い世代が考えてほしい」とコメントしている。
【来夏に決定】
新目標は21年7月にも決定を目指す。21年1月に公募した目標検討チームから約20件選ぶ。1件当たり500万円程度を支給し、6カ月間で調査研究を行う。その結果から、同年6月にも目標候補を1―2件に絞る。同年7月に内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI、議長=菅義偉首相)で最終的な目標を決め、文部科学省が目標達成に向けた研究開発構想を策定する。同年8月に研究開発を推進するプロジェクトマネジャー(PM)を公募し、同年12月にPMを採択する予定。
研究開始後は、既定の期間に外部評価をするといった「ステージゲート方式」でプロジェクトの継続や加速、中止などを決定する。