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「近距離無線通信」と「送電」を一括で。6G向け新技術を電通大が開発

電気通信大学先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センターの石川亮准教授らは、次世代の第6世代通信(6G)に向け、近距離の無線通信と送電を一括で行う新技術を開発した。電磁場のエネルギーを回転させながら進む軌道角運動量(OAM)波(用語参照)を使って電波の情報量を増やす多重技術に、非接触での給電機能を加えた。大容量通信と端末への給電が同時にできるため、例えばバッテリー切れのスマートフォンでも、充電しながら映画などの大容量データを端末にタッチするだけで送受信できる。

同一周波数で無線通信を多重化するOAM波は周波数、時間、空間、符号に続く“第5の電波資源”とされ、6Gを実現する技術として期待されている。

石川准教授らは、OAM波を発生するループアンテナに渦巻き状の金属パターンを組み合わせたモジュールを開発し、OAM波の送受信と非接触の送受電を初めて同時に実現した。両機能を一体化した開発モジュールは薄く小型化が可能で、将来カード端末などに組み込めるという。

現行の5Gレベル以上の5・2ギガヘルツ(ギガは10億)の電波を数センチメートルの距離で無線通信し、同時に34メガヘルツ(メガは100万)の電波で電力伝送し充電に十分な15ワットの電力を瞬時に供給する実験に成功した。

OAM波信号は高い強度比で分離でき、80%以上の高効率で電力伝送できた。

総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業の支援を受けて開発した。2021年1月にオランダで開かれる欧州マイクロ波国際会議で成果を発表する。

【用語】軌道角運動量(OAM)波=電磁波のエネルギー流密度が電波の進む方向からずれて回転している電波。光通信では14年に毎秒100テラビット(テラは1兆)伝送が実現している。ループアンテナでOAM波を発生させる場合、円周を電波の波長の1倍、2倍、3倍と整数倍にそろえると、OAMの回転数が1、2、3に対応した信号を取り出せる。ループアンテナの数だけ電波の情報量が増える。OAM波の回転数は無限に存在するため通信容量を大幅に増やせる。

大容量通信と電力伝送の両機能を一体化したモジュール
日刊工業新聞2020年11月17日

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