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ロボット市場の本当の定義とは?2035年に「9.7兆円」は製品市場の期待値

文=三治信一朗(NTTデータ経営研究所)「サービス単価×使用回数がロボットを活用した市場になる」
ロボット市場の本当の定義とは?2035年に「9.7兆円」は製品市場の期待値

今後さまざまな家庭のシーンに入ってくる

 ロボットの市場予測はこれまで何度か試算されてきた。2025年に8兆円と示されたこともあれば、もっとも最近の市場予測は公表されているもので35年に9・7兆円というものである。

 この市場推計値はあくまでも製品市場の期待値であるとみておく必要がある。10年以上も前から大きな市場規模となることを期待されているのは、産業用ロボットのような急速な市場拡大がサービスロボット分野にも当てはまると見立てられたためである。家電、スマートフォンのような普及がサービスロボットにも適用されるというある種のコンセンサスのようなものがあった。

 しかし、実際にロボット市場を定義しようとすると難しいことがわかる。産業用ロボットのようにロボットそのものだけで出荷価格、出荷量がわかるようなものは統計が取りやすい。しかし、サービスロボットになるとメーカーの数が多いということに加え、開発品の類も多い。また、動くものであれば何でもロボットにしてカウントすることもできてしまう。そもそもロボットとはどう定義するのだという声も少なからずある。

 【グローバル市場】

 国際的には国際ロボット連盟(IFR)がグローバル市場を毎年公表している。これは主要なロボットメーカーと各国の業界団体が協力しているものなので、ある程度確からしい。それでもロボット的な要素を取り上げることは難しく、ある程度、製品として認知されているものが市場の定義として構成されている。

 お掃除ロボットも製品が認識され、一般的になると市場定義もできた。一方で、ロボット的なもの、例えば家電製品のエアコンの中で人を検知して、そこだけ風量を調整するといった機能は、その付加価値分はロボットが寄与していると捉えることができるが、市場規模のカウントはされていない。

 また、産業用ロボットの付加価値を考えた場合には、産業用ロボットはそれ単体では半完成品であり、工場のラインにすぐに入ることはなく、システムインテグレートする必要がある。治具の据え付け、プログラミング、調整などをすることで使えるロボットシステムとなる。

 【産業構造の変化】

 こうみるとロボット単体よりもシステム付加価値が何倍も大きなものとなる。また、ロボットが提供する価値を考えた場合、例えばロボットを使って介護サービスを提供する場合は、サービス単価×使用回数がロボットを活用した市場になる。このようにロボット市場の創造は産業構造の変化を伴う。

 
三治信一朗(さんじ・しんいちろう)NTTデータ経営研究所 事業戦略コンサルティングユニット 産業戦略チームリーダー シニアマネージャー。2003年(平15)早大院理工学研究科物理学及応用物理学専攻修了、同年三菱総合研究所入社。15年NTTデータ経営研究所に入社し産業戦略チームリーダー。
日刊工業新聞2015年10月23日 ロボット面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
記者をやっている身としては○年に○兆円という数字があった方が記事にしやすいのは事実。でも実際は予測なので、5年先ぐらいのものなら、5年経ってみたらだいたいそれより下回っている。ベンチャーでも成長市場であるかを見極めるのがまずもって重要で、そこに的確なタイミングで投資すればスケールする確実性はかなり高まる。やっかいなのはもう少し長期のスパーン。これからのロボット市場は記事にもあるように、閉じた市場ではなく産業構造の変化そのものであり、右脳と左脳をフル回転させなければいけない。

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