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ソニー、画像センサーで独走狙う。東芝の事業買収か

東芝の生産拠点・大分工場の一部を取得する案浮上
**シェア4割超。デジタル化、自動車搭載でまだまだ成長
 相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサーは、スマートフォン向けが2014年出荷額で約6割強と最大の市場になっている。しかも最近のスマホはフロントとリアで最低2個のセンサーが使われる。中国やインドなどの新興国では中・低位機種中心にスマホが引き続き成長すると見られることから、ガートナーでは14年から5年間のCMOSイメージセンサーの年間平均成長率(CAGR)を6―7%と予測している。

 アップルが新技術を採用すれば、さらに需要拡大へ

 4月には米アップルがイスラエルのカメラ技術ベンチャーであるリンクスを買収した。リンクスのソリューションは2個、4個、8個など多数のセンサーを使い、高精度で3次元の画像データをとらえる仕組み。iPhone(アイフォーン)にこの技術が搭載されるうわさもあるが、実際にそうなれば他社も追随し、イメージセンサーの需要拡大につながる。

 14年の市場全体のシェア順位は(1)ソニー(2)米オムニビジョン(3)韓国サムスン電子(4)米オン・セミコンダクター(5)中国ギャラクシーコア。ソニーはCMOSセンサー全体の4割強、スマホ向けでは5割以上を占める。

 ソニーは自らカメラやカムコーダーも手がけ、絵づくりがうまいのに加え、高感度の裏面照射(BSI)型CMOSセンサーに必要な薄いウエハーを歩留まり良く製造する技術を持つ。チップの積層化でも先行する。14年で前年比38%増と需要に供給が追い付かないことから、今年に入って2000億円を超える設備投資も決めた。一方、サムスンも同23%増と伸びており、15年も高成長が見込まれる。

 自動車向けの年平均成長率は28%、M&Aも活発化

 他の半導体と同じようにM&A(合併・買収)も進む。米オン・セミは14年に自動車向けイメージセンサーに強い米アプティナイメージングを買収。4月にはソニー、サムスンにスマホ向けを奪われていた米オムニビジョンが、中国の投資グループに約19億ドルで買収されることが決まった。

 それ以外の分野の年間平均成長率は自動車が28%、監視カメラ17%、スマホを含む通信機器8%。自動車は米国で16年からリアカメラ義務化などの安全策が強化されることから市場が伸びそう。このほか運転手の目の動きを監視したり、自動運転車の普及などもあり、20年に1台当たりイメージセンサーが6個くらい搭載されるとガートナーでは予測している。

 監視カメラ向けで一番伸びているのが中国市場。治安を監視するニーズが強いためだ。CMOS市場が拡大する一方、電荷結合素子(CCD)イメージセンサーは14年で前年比15%減と縮小傾向。ただ暗いところでも高解像度の画像が得られることから、CCD監視カメラなどの市場は今後も残ると見ている。
 <文=ガートナージャパンリサーチ部門主席アナリスト・清水宏之氏>
日刊工業新聞2015年06月17日 電機・電子部品「テクノロジーウオッチ!進むデジタル化」より
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
東芝の大分工場は以前から売却話が何度も持ち上がっていたが、規模が中途半端なことやプロセスに柔軟性がないため立ち消えになっていた。今回、ソニーがイメージセンサーの部分だけの工場を譲り受けるのか。現実的には、大分工場は人員削減や不要な設備を売却・除却して、ソニーが丸ごと使うのが現実的だろう。

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