音声認識家電に全力のアイリスオーヤマ「じわりじわり伸びている」
【仙台】直接話しかけて操作する音声認識技術を用いた家電製品を2019年に市場投入したアイリスオーヤマ(仙台市青葉区、大山晃弘社長)。「音声操作シリーズ」として照明を皮切りに、テレビ、サーキュレーター、エアコンと相次いで商品化した。ただ一般に音声操作による家電の浸透はまだなじみが薄い。アイリスでは消費者との「共感」を育み、長い目で市場形成を目指している。(編集委員・大矢修一)
シーリングライトをトップバッターに、音声操作の家電製品を投入して1年余りが経過。開発を担う家電事業本部TV・OA機器事業部の鴫原秀郎マネージャーは「今のところ売れ行きに頭打ち感はない。じわりじわりと伸びている」と手応えを感じている。
特徴は無線LAN環境やスマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)操作が必要なく、面倒な初期設定がない点だ。アイリスではすでにスマートスピーカーや専用アプリを通じて音声操作できる照明やエアコンを投入していたが、「無線LANへの接続や専用アプリの設定が難しい」など一部ユーザーからの不満の声への対応が新たな開発の動機だ。「音声で制御する点に絞った商品化」(鴫原マネージャー)を追求した。
各商品とも操作キーワードは決まっている。音声認識は全国のアイリスグループ社員らの協力も得て、音声の高低など「なまり」の認識も人工知能(AI)をツールにつくりあげた。言葉の意味が変わってしまうような「方言」への対応は無理だが、なまりが原因で動かないクレームはほぼないという。鴫原マネージャーは「裾野の広い音声認識ができている。ただ100%ではない。まだやりたいことはある」と一段の進化もにらむ。
音声で何ができるのか。音声操作による家電の便利さを消費者に共感してもらうことが幅広い浸透につながるとみている。例えばシーリングライトでは、布団から出なくても音声で照明のオン・オフができるなど、「ここが便利」をユーザーとともに共感していくことで、音声操作の潜在的な力が、生活の各場面に入り込んでいくと想定する。
音声操作シリーズの中で、テレビとエアコンには音声認識回路とマイク内蔵の専用リモコンを設けた。機器本体から離れた場所からでも大きな声を発せずに操作できる利便性も付加してきた。専用リモコンを使うことで機械からのノイズなどの影響も抑えられる利点もある。いかにユーザー視点を取り入れるかが、商品開発の方向性を握る。
音声操作による家電の市場形成は始まったばかり。鴫原マネージャーは「可能性はさまざまにある」と指摘する。今後の商品開発は音声操作の可能性を探りながら、時間をかけ取り組む構えだ。