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なんと「負荷2トン」に耐える生分解性ゲル開発、重油流出にも使い道

日本原子力研究開発機構物質科学研究センターの関根由莉奈研究員らは、高い強度と成型性を持つ生分解性のゲル材料を開発した。氷の凍結現象に伴う物質の構造変化を利用。2トンの圧縮負荷にも壊れずに高い復元性を示した。プラスチック代替材としての緩衝材や吸着剤としての環境浄化材料、再生医療材料などへの応用が期待される。

バイオマス素材を原料とした生分解性ゲル材料は、幅広い展開が期待されるものの、強度や成型性に弱点があり、用途範囲が限定的だった。環境にやさしい、高強度なゲル材料の開発に成功したのは世界で初めてという。

関根研究員らは、マイナス20度Cの環境で凍らせたセルロースナノファイバー(CNF)にクエン酸溶液を添加する実験を行った。マイナス4度Cの環境で溶かすと、白く不透明なゲルが形成されることを確認した。圧縮強度を測定すると、水を放出しながら10分の1以下の厚みにつぶれるほどの柔らかさを持ちつつ、圧縮を止めると吸水して元の形状に戻った。

2トンの圧縮負荷に耐える強度の仕組みを走査型電子顕微鏡で調べると、薄い壁に囲まれた数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の、細胞と同じくらいの微細な穴を持った構造が観察された。凍結時に反応剤を加えることで、氷の結晶の周囲に凝縮したCNFが水素結合によって強固な3次元ネットワーク構造を形成することを発見した。

汚染水から有害物質を回収する吸着剤としても有用である可能性が高いことから、モーリシャスで起きた貨物船の重油流出事故の時のような使い方も視野に入れている。

東京都立産業技術研究センター、東京大学との共同研究。

日刊工業新聞2020年11月2日

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