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未来につなぐ生産設備-独ボッシュの構想

インダストリー4.0連載第二部#03 日本人が見せろ見せろとかなりうるさいらしい
 ドイツ西部のザールラント州ホンブルクという小都市で、インダストリー4・0(I4・0)の先駆的なシステムが動いている。自動車部品世界最大手独ボッシュのグループ会社、ボッシュ・レックスロスが運営する、農機・建機向け油圧機器工場の、油圧バルブ組み立てラインだ。

 U字型のセル型ラインは、一見するとどこがI4・0なのかわからない。「”つながる“ことが最大の特徴。外見からだけではまねできないでしょう」と生産計画部門の責任者マティアス・メラー氏。実はこのラインには「ユースケース」と呼ぶI4・0関連システムの先端的な使用例が六つ盛り込まれた。今後、同様のシステムを開発する際にもひな型になるものだ。

 【発信器を装着】
 何が「つながる」のか。まずは作業者と設備がつながる。作業者はラインに着く際、たばこの箱のような発信器を身につける。この発信器が近距離無線のブルートゥースを通じてシステムとやりとりし、誰がどこで作業しているのかを認識する。熟練度に応じて作業台の液晶画面に映す作業指示の内容を変えたり、作業台の照明の明るさを変えたりする。

 設備と設備もつながる。組み立て対象物を載せる治具にICタグが埋め込んであり、どの工程に何があるかを把握する。一つの工程を制御するコントローラー(PLC)が次工程のコントローラーとやりとりし、作業にミスがないかをチェック。正しい部品を部品箱のランプで知らせるといった工夫で、7種類の製品を一つのラインで組み立てることが可能になった。従来は異なる7本のラインを動かしていた。

 【拡張にらむ】
 かなり「賢い」この生産ライン。だが、同様の発想で柔軟性を高めたラインはおそらく日本の工場にもたくさん存在するはずだ。I4・0のすごみは、今後の拡張をにらんだ壮大な構想にある。

 ボッシュは同様のシステムを、2017年末までかけて機械加工や試験などほかの工程にも展開。さらにはサプライヤーやユーザーなど工場外ともつなぐ計画だ。

 「建機などの最終ユーザーがパソコンで仕様を設定して発注すると、ラインに自動で油圧機器のオーダーが入るようにする」(メラー氏)。

 研究開発部門で生産自動化のチーフエキスパートを務めるヨアヒム・フランゲン氏は「世界に250ある工場からユースケースやベストプラクティスが集まる。ボッシュは生産システムの供給と利用の両面をリードできる」と話す。構想を構想で終わらせないための実現力が問われている。
日刊工業新聞2015年10月22日付1面
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
 ボッシュの工場に行ってラインを見てきました。せっかくえっちらおっちらドイツまで行ったので、ちゃんとどんな生産ラインだったか説明しようと思って長い記事になりました。しかしまだ、説明し切れてないことがたくさん取材メモに書いてあります。  特に日本人が、見せろ見せろとかなりうるさく言ってきているらしい。日本の取引先自動車メーカーからも、お偉いさんが見せろ見せろといってくるらしいです。でもそんなに見せられないし、あんまり見せてない、みたいなことを言っていました。  ま、正直ぱっと見ただけでは、何がどうすごいのかよくわからないかもしれません。  しかしボッシュはほかにも、半導体工場とか物流関係とか、I4・0関連のシステム化をどんどん進めていて、総合的に見て効果は非常に上がりつつあるといったことを言っていました。    

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