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現実味帯びてきた「空飛ぶクルマ」、日本精工が市場形成へ一手

現実味帯びてきた「空飛ぶクルマ」、日本精工が市場形成へ一手

高層ビル群の上空を空飛ぶクルマが飛び交う(イメージ=経産省提供)

日本精工は、空飛ぶクルマなどを支える技術として「可変ピッチ機構付きモーターハブ」を開発した。推進力や揚力を生むブレード(羽根)の向きを調整できるため、機体の安定化や低電力化、航続距離の確保につながる。同社は自動車や航空産業に軸受・ボールネジを提供してきた。この技術を応用し、空飛ぶクルマや飛行ロボット(ドローン)など新分野での活用を模索する。

同モーターハブは、機体を浮かすための羽根の角度をボールネジの機構を活用して制御するもの。具体的にはサーボモーターの回転を複数のギアを通じてボールネジに伝える。ボールネジの上下運動によりピニオンギアがかみ合い、羽根の角度を変えられる。

可変ピッチ機構付きモーターハブ

横風が吹く場合などでは従来、モーターの回転速度を制御して機体の安定化を実現していた。ただ、大型ドローンや空飛ぶクルマなどで同様のことをすると高負荷の電力がかかる。同モーターハブを利用することでモーターの回転を一定にしたまま、機体の安定が可能になる。

経済産業省と国土交通省は2018年に、空飛ぶクルマの実現に向け「空の移動革命に向けた官民協議会」を設立した。ロードマップを作成し、民間企業への試作機開発を後押ししていく狙いがある。

日本精工は19年にNECが実施した試作機の飛行実験に同製品を提供するなど同分野の市場形成に力を入れている。

日刊工業新聞2020年10月28日
川口拓洋
川口拓洋 Kawaguchi Hiromi 名古屋支社 記者
「空飛ぶクルマ」といえば漫画や映画の世界の移動手段かと思いきや、ここに来て現実味を帯びてきている。飛行ロボット(ドローン)の活用は農業や建設業、物流業、防災関連と多岐にわたる。大型化したドローンが「人の移動」として使われる日が来ても不思議ではない。日本精工が開発した「可変ピッチ機構付きモーターハブ」は機体の安定化や低電力化、航続距離の延長を実現するもの。電気自動車(EV)と同じく、空飛ぶクルマに求められるのは安全性や実用性である可能性が高い。企業の日々の技術開発の積み重ねが、空飛ぶクルマという夢を現実に近づけている。

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