「情報量は変わらない」…東京一極集中に変化、コロナで地方移住への関心高まる
柔軟な働き方、企業も支援
新型コロナウイルスの影響で東京一極集中に変化が起きている。みらいワークスが東京で勤務する35―65歳の正社員管理職1600人に行った調査によると、地方企業への転職に興味があると答えたのは全体の半数で、35―44歳の4割が新型コロナ感染症拡大後に地方で働くことへの関心が強まったと回答した。リモートワークの普及で働く場所を選ばなくなった今、地方移住はより身近な選択肢になりつつある。(大阪・大川藍)
ハカルス(京都市中京区)は工場の異常検知や医療診断支援への応用が期待される人工知能(AI)開発を手がけるベンチャー企業。同社に勤務するスギヤマタケシ氏は米国からの移住組だ。国民皆保険制度のない同国の医療体制に不安を持ち、コロナ禍を機に日本への移住を決意。自身のスキルを生かせるハカルスを転職先に選び、今夏入社した。
滋賀県で在宅勤務し、海外との会議をこなすスギヤマ氏。一般的に情報収集は首都圏が有利とされてきたが、「イベントがオンラインになり、地方でも情報量は変わらない」と指摘する。
同社は「東京のAIベンチャーと差別化する」(採用担当の菊本知美氏)ため、入社前に一定期間京都で生活してもらうなどの手厚い移住サポートを提供する。事業の独自性に加え、移住支援が決め手となり、今年に入って外国や東京圏から4人の採用に成功した。
産業用ロボットのソフトウエア開発を手がけるリンクウィズ(浜松市東区)の吹野豪代表も東京一極集中の変化を感じている。同社は人材獲得にあたり、首都圏からの採用を強化してきたが、4月の緊急事態宣言以降、「このまま東京にいて良いか迷っている人が多い」(同社の吹野代表)状況といい、実際に静岡へ移住するエンジニア3人の獲得に成功した。
リモートワークが新しい日常となり、都心に住みながら副業に挑戦し、地方での就職を疑似体験する人も増えているという。みらいワークスの調査では全世代の75%が副業経験後、その地域へ移住・転職する可能性があると答えるなど、働き方や働く場所に関する考え方はより柔軟性を増している。
給料や待遇の良さだけで都市圏に社員を囲い込める時代は過去になりつつある。事業の社会的意義や、画一的でないライフスタイル提案など、多様な観点で企業の魅力を高める努力が求められそうだ。