東電・中部電の合弁会社が火力発電所をデジタル化、AI・IoTで550億円のコスト減
JERAは火力発電所の運転や保守業務のデジタル化を進める。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)技術を活用。2020年度に常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)や碧南火力発電所(愛知県碧南市)など4発電所で先行し、23年度までに国内火力発電所26カ所に展開する。導入効果は65万キロワット2基の石炭火力発電所の場合、熱効率の向上や保守の最適化により、40年運転時で550億円のコスト削減効果と試算する。
JERAは東京電力ホールディングスと中部電力の火力発電を承継し、発電容量6700万キロワットと国内最大。コスト削減に加え、業務効率の向上や二酸化炭素(CO2)排出削減にもつなげる。23年度以降にパッケージ化して海外発電所への導入や、他社発電所への販売も視野に入れる。
デジタル化では、過去の膨大な運転データをAIに学習させ、運転最適化に必要な設定パラメーターを算出。例えばボイラの効率的な燃焼と環境負荷軽減を両立したパラメーターを得て、燃料費とCO2排出を削減する。
IoTでは発電所設備の運転状況を遠隔監視センターで監視し、設備の異常予兆を検知する。不具合による停止を削減し、稼働率を向上。巡視点検、不具合管理分析などの業務ごとにデジタル化を適用し、この各モジュールを組み合わせて全体最適を図る。
同社は50年時点で国内外の事業から排出するCO2を実質ゼロにする計画で、石炭火力はアンモニア混焼、専焼を目指す。碧南発電所は当初計画の対象であり、最適な混焼の比率などのノウハウもデジタル化して他の発電所に展開する考えだ。
日刊工業新聞2020年10月27日