日本触媒がEV電池向け電解質を増産、5000トン体制への道筋
日本触媒の五嶋祐治朗社長は22日、日刊工業新聞のインタビューに応じ、リチウムイオン電池向け材料「イオネル」の年間生産能力を2030年までに約5000トン(23年時点で2400トン)以上に引き上げる方針を明らかにした。世界的な電気自動車(EV)の需要拡大に対応する。一方、業績悪化で三洋化成工業との経営統合を中止したことについて、五嶋社長は「我々の方が新型コロナウイルスの影響による耐性が弱かった」と認めつつ、単独での持続的成長を見据え、新規事業分野を積極的に伸ばす。
イオネルは正極と負極の間に電気を通す電解質に使う素材。全固体電池など次世代電池の電解質としての需要も期待できる。三洋化成グループが開発する全樹脂電池にも供給している。電池技術をはじめ、三洋化成とは「より一層協業していく」(五嶋社長)方針。
関係会社の日触テクノファインケミカル(千葉県市川市)の敷地内に年間2000トンの生産能力を持つ製造設備を建設しており、23年春に稼働する見通し。さらに欧州での設備投資も検討し、30年までに合計で年約5000トンまで生産能力を拡大する。
一方、主力事業の高吸水性樹脂(SAP)では三洋化成との統合効果を得られなくなるが、姫路製造所(兵庫県姫路市)をモデルプラントとして「人が関わっている作業を3分の1くらいにはできる」(五嶋社長)と、生産性向上を進める。
経営統合中止の発表翌日22日の日触の株価は、終値で5280円と、前日終値から約3・5%下落。三洋化成は終値で4495円と、前日終値から約7・3%下落した。市場の反応は厳しいが「株価はいろいろな見方で評価されるので一概に言えない」(同)。
五嶋社長は「海外メーカーに対抗するには規模を含めた力を付けないと太刀打ちできない」と述べ、高付加価値品で売り上げよりも利益を追求する三洋化成との経営方針の相違があったことを認めた。
一方、経営統合に向けた社員同士の交流の中で「違う会社の文化に触れ、自分たちの足りない部分に気づけたのが一番大きな成果だ」と総括した。