鉄道レールの劣化メカニズムを解明しよう!スパコンで5年後に8輪解析
最近、ちょっと事故が多いな、と思っている方へ。鉄道総研は頑張ってます。
鉄道は車輪とレールが常に接触面を変え、転がりながら進む。車輪とレールのような連続的な動きをシミュレーションするには、複雑な力学現象を再現する必要があり、膨大な計算式が必要となる。鉄道総合技術研究所(鉄道総研)では、レールの摩耗や亀裂など、劣化のメカニズムを解明するため、スーパーコンピューターを用いてレール上の車輪の転がりを再現。劣化のメカニズムが解明されれば、摩耗や亀裂を回避し、保守も適切にできるようになる。鉄道の安全性向上を目指し、研究が進められている。
【有限要素法に】
鉄道総研が「大規模並列計算によるレール・車輪間の転がり接触解析手法の構築」の研究に着手したのは2010年。車輪とレールの間には高い衝撃力や高周波振動が発生する。しかし、車輪とレールの接触面で発生する現象を実験的に再現して評価するのは難しいため、シミュレーション技術が生かされることになった。
鉄道総研ではまず、レールと車輪の接触面の力学現象をシミュレーションする計算手法を選定。車輪とレールのような連続体の構造解析は、1―2台の計算機では難しいことから、スーパーコンピューターによる大規模並列計算を適用した有限要素法を用いた。これにより、高い衝撃や高周波振動が発生するレールと車輪の接触面を評価するシミュレーターの開発を進めている。
【スパコンで分担】
シミュレーターの開発にあたり、車輪とレールの3次元精密モデルである「キャタピラメッシュ」を構築した。このキャタピラメッシュを用いて、車輪とレールの動的転がりの接触解析を実施。キャタピラメッシュを10―20の領域に分割して、一つひとつをスーパーコンピューターで分担して計算した。
こうした計算をこつこつと積み重ねて、14年7月に車輪1輪の解析を可能にした。1輪の解析が可能になったことで、スティックスリップと呼ばれる、走行の際に車輪の後方が滑る現象などもシミュレーションで再現した。車輪1輪の解析には、約1億の連立方程式をほぼ同時に解く大規模並列計算が必要になる。鉄道総研では、並行して計算を高速化するプログラムの開発などに取り組み、研究自体のスピードも上げている。
今後は、15年度中に2輪の解析を目指している。16年度には、さらに4輪の解析を可能にする計画だ。4輪の解析ができれば、直線だけでなく曲線の走行を再現することができるようになり、解析の精度が高まる。ただ、鉄道旅客車両1両には、車輪が8輪ある。当面の目標は、8輪の解析ということになる。
【5年後実用化】
解析する車輪の数が増えれば、当然、連立方程式の数も増える。連立方程式は単純計算で、2輪なら2億、4輪なら4億、8輪なら8億が必要だ。これだけの連立方程式を同時に解くには、スーパーコンピューターの高度化が不可欠になる。
鉄道総研は、13年に総合処理能力がそれまでの約10倍に相当する114・7テラフロップスのスーパーコンピューターを導入した。ただ、このスーパーコンピューターの性能では、8輪の解析は難しいのが現状だ。鉄道総研ではおおむね4年おきにスーパーコンピューターを更新している。スーパーコンピューターの更新を進めながら、解析できる車輪の数を増やしていく。
8輪の解析ができるようになり、車輪とレールの動きが再現できるようになれば、レールの摩耗の研究などに生かすことができる。鉄道総研では5年後の実用化を目指し、研究開発を進めている。
【有限要素法に】
鉄道総研が「大規模並列計算によるレール・車輪間の転がり接触解析手法の構築」の研究に着手したのは2010年。車輪とレールの間には高い衝撃力や高周波振動が発生する。しかし、車輪とレールの接触面で発生する現象を実験的に再現して評価するのは難しいため、シミュレーション技術が生かされることになった。
鉄道総研ではまず、レールと車輪の接触面の力学現象をシミュレーションする計算手法を選定。車輪とレールのような連続体の構造解析は、1―2台の計算機では難しいことから、スーパーコンピューターによる大規模並列計算を適用した有限要素法を用いた。これにより、高い衝撃や高周波振動が発生するレールと車輪の接触面を評価するシミュレーターの開発を進めている。
【スパコンで分担】
シミュレーターの開発にあたり、車輪とレールの3次元精密モデルである「キャタピラメッシュ」を構築した。このキャタピラメッシュを用いて、車輪とレールの動的転がりの接触解析を実施。キャタピラメッシュを10―20の領域に分割して、一つひとつをスーパーコンピューターで分担して計算した。
こうした計算をこつこつと積み重ねて、14年7月に車輪1輪の解析を可能にした。1輪の解析が可能になったことで、スティックスリップと呼ばれる、走行の際に車輪の後方が滑る現象などもシミュレーションで再現した。車輪1輪の解析には、約1億の連立方程式をほぼ同時に解く大規模並列計算が必要になる。鉄道総研では、並行して計算を高速化するプログラムの開発などに取り組み、研究自体のスピードも上げている。
今後は、15年度中に2輪の解析を目指している。16年度には、さらに4輪の解析を可能にする計画だ。4輪の解析ができれば、直線だけでなく曲線の走行を再現することができるようになり、解析の精度が高まる。ただ、鉄道旅客車両1両には、車輪が8輪ある。当面の目標は、8輪の解析ということになる。
【5年後実用化】
解析する車輪の数が増えれば、当然、連立方程式の数も増える。連立方程式は単純計算で、2輪なら2億、4輪なら4億、8輪なら8億が必要だ。これだけの連立方程式を同時に解くには、スーパーコンピューターの高度化が不可欠になる。
鉄道総研は、13年に総合処理能力がそれまでの約10倍に相当する114・7テラフロップスのスーパーコンピューターを導入した。ただ、このスーパーコンピューターの性能では、8輪の解析は難しいのが現状だ。鉄道総研ではおおむね4年おきにスーパーコンピューターを更新している。スーパーコンピューターの更新を進めながら、解析できる車輪の数を増やしていく。
8輪の解析ができるようになり、車輪とレールの動きが再現できるようになれば、レールの摩耗の研究などに生かすことができる。鉄道総研では5年後の実用化を目指し、研究開発を進めている。
日刊工業新聞2015年04月13日 モノづくり面