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「焼酎は世界で売れていく」霧島酒造のブランド戦略

江夏専務インタビュー。売上高1000億円へ投資をちゅうちょしない
 霧島山脈を臨む宮崎県都城市にある霧島酒造。来年、創業100年を迎える同社の代表的商品といえば「黒霧島」だ。同社は黒霧島のヒットとともに、地方の小さな酒造会社から2012年には焼酎市場1位へと躍り出た。昨年の売上高は565億円と業界トップ。兄の現社長とともに市場開拓の陣頭指揮を執ってきた江夏拓三代表取締役専務にブランド戦略などを聞いた。

 ―快進撃が続いています。ブランド戦略を教えてください。
 「焼酎の役割はおいしい食事を引き立てる作業。この本質を理解しなければ焼酎産業に携わってはならないと思う。食後に飲むブランデーのように酒そのものが主体ではない。今は多様な食文化の時代。食事中に焼酎を飲むことで口をさっぱりさせる効果がある。辛い、甘い、酸っぱい、デリケートなうまみや丸みを感じ我々の味覚を魅了する。これが焼酎文化だ。その次にデザイン性やイメージ戦略が次第に固まり、押しも押されもせぬブランドとなっていく」

 ―今後の事業展開について。
 「(たくさん)売り上げたらそれ以上に設備投資できるというのが私の考え。この時代、ちゅうちょしていたら間に合わない。ただし売り上げと利益率を圧迫してはいけない。日頃から利益率約15%、人件費比率5%以内に抑えるよう言っている。現在の売り上げは本州地区を中心に好調に推移している。増加傾向は東京五輪開催の20年まで途絶えないと見ており、年間売り上げも1000億円超の達成が目標だ。工場増設も視野に入れている」

 「新しい品種のさつまいもを作り出して、世界で唯一無二の自社商品にする。既に発売した赤霧島、茜霧島がそうだ。見たことも聞いたこともないものを作るのが大事。食産業だけでなく他産業も同様だ」

 ―環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意をどう見ますか。
 「6次産業化をどう図るかが重要だ。日本の産業や農産物そのものだけではうまくいかない。加工し、付加価値をつけ、最終商品を世界に売る戦略を練ることが大切だ。これからウイスキーやワイン、世界の酒との戦いが始まる。TPOに応じてワインもどうぞ、でも焼酎もおいしいですよ、と。こんなに日本中の人が飲んでいる。焼酎は世界で売れていくというのが私の考えだ」

 【記者の目/6次産業化担うプレーヤー】
 先代の熱い志を受け継ぎ、日本一の焼酎メーカーに上り詰めた霧島酒造。地域の原料の活用や雇用創出など、都城市と連携した地方創生にも力を注ぐなど、地元との絆も強い。TPP時代の6次産業化を担うプレーヤーとして、霧島酒造のさらなる躍進に期待したい。
(聞き手=山下絵梨)
日刊工業新聞2015年10月21日 生活面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
帝国データバンクの調査によれば、2014年の売上高は前年比約9%の増収と躍進しています。ただ、売上高をあと5年でどうやって約2倍に伸ばすのか。もはや定番化した「黒霧島」の国内におけるブランド力の維持向上と、知名度の低い海外での芋焼酎の拡販戦略が気になります。

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