テレワーク7割のあおぞら銀、課題は「情報共有の難しさ」
あおぞら銀行の働き方改革が人事制度の整備から実践段階に移ってきた。2017年の東京・麹町への本社移転を契機に、テレワークなど人事制度を整えてきた。新型コロナウイルス感染症対策でテレワークの利用が一気に進んだのは、制度の下地があったことが大きい。新型コロナの影響が従業員の働き方をどう変えたかも分析しており、今後に生かすことが期待される。(戸村智幸)
銀行の押しつけではなく、従業員自らの手で柔軟な働き方を推進する。これは同行が導入してきた人事制度の根底にある考え方だ。16年にフレックスタイム制度の利用推進に着手し、管理職にも積極的な利用を促した。
17年には在宅・モバイル勤務制度を導入。上司が認めれば誰でも利用でき、場所を問わない。出社は週1回でよい。しかし、好条件にもかかわらず、利用は進まなかった。
17年度に月に1日以上テレワークを実施した従業員は約10人。18年度は約60人にとどまった。それが新型コロナの感染拡大で非対面・非接触が推奨されたことを受け、20年3月には約620人に急増した。5月には約1400人と、従業員の約7割に達した。
高山功士人事部企画課長は「ノートパソコンの配布やトライアルなど制度を整備していた」と、急速に普及できた理由を挙げる。緊急事態宣言解除後の6月も約1300人がテレワークを利用、制度が根付きつつある。
人事制度の取り組みでは18―19年度に実施し、累計で約500人が参加した「働き方改革フォーラム」が、従業員の意識付けになったと言える。4、5人で1チームを組み、他部門の従業員の意見や状況を聞くことで、働き方改革について自身ができることや、すべきことを再確認してもらう目的だった。青山裕常務執行役員は「具体的な効果を求めるより、意識を持たせることが大事だった」と狙いを明かす。
新型コロナ影響による働き方の変化では、従業員へのアンケートでテレワークの業務効率の向上が課題として見えてきた。約半数が「通常勤務より効率が低い」とし、業務量も45%が「通常勤務より少ない」と回答した。
テレワークで支障があることとしてコミュニケーションの減少や関係者との情報共有の難しさを挙げる声が多かった。そこで意識的にコミュニケーションを取れるようウェブ会議システムを導入した。従業員の評価制度については、すでに各自の成果物で評価する仕組みになっている。
人事制度の新たな取り組みが新型コロナ影響で遅れている面もある。若手を取引先や業務提携先に出向させる“武者修行”制度は、4月からの計画だったが年後半の実施を目指している。
このほか、副業・兼業の原則禁止を4月に撤廃しており、業務内容を確認した上で認める。行内で要望が高かったため応えたが、こちらも活発に進むか不透明だ。これらの取り組みが進展するかは、新型コロナの収束度合いに影響されそうだ。