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脱炭素へ地域主導で動き出す。「ゼロカーボンシティ」でどれだけ浸透してる?

温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「脱炭素」を目指す自治体の取り組みを支援しようと、環境問題の有識者や経営者らが11月、「気候非常事態ネットワーク」を設立する。市民や学生とも連携し、脱炭素実現に向けた行動計画の策定と実行を後押しする。環境省も自治体支援を強化する方針で、地域が主導する形で日本が脱炭素へ動きだす。

東京大学の山本良一名誉教授、サラヤの更家悠介社長が発起人代表となって11月18日にネットワークを発足する。政府の有識者会議メンバーを務めた枝広淳子氏(幸せ経済社会研究所所長)らも発起人となる。事務局は更家社長が理事長のNPO法人ゼリ・ジャパン(東京都品川区)に置く。

豪雨や台風などの気候災害に危機感を募らせた自治体が「気候非常事態宣言」を発表している。2050年までに脱炭素を目指すと宣言した「ゼロカーボンシティ」も増えている。ネットワークはこうした自治体に連携を呼びかけ、情報を共有することで脱炭素への具体策となる行動計画の策定を促す。

ネットワークはまず、英国の自治体が公表した行動計画を分析したガイドブックを作成し、日本の自治体に参考としてもらう。また、市民が政策提言をする「市民会議」の開催を呼びかけ、住民を巻き込んだ行動計画づくりを推進する。

山本名誉教授によると、英国の自治体は行動計画を公表する段階に入っているが、日本は宣言にとどまっている。また英国では脱炭素の達成時期を30年に設定するなど意欲的になっており、日本が遅れる懸念がある。

世界では1700の自治体が気候非常事態宣言を出している。日本では長崎県壱岐市が19年9月に初めて宣言し、現在は40近くに広がった。「ゼロカーボンシティ」も小泉進次郎環境相の呼びかけがあり、150自治体を超えた。環境省は21年度予算概算要求に、自治体の再生可能エネルギー導入などの関連事業に総額455億円を計上した。

日刊工業新聞2020年10月5日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
ゼロカーボンシティが増えているけど「宣言だけでいいのか」「どうやって実行するのか」という声があります。宣言した150以上の自治体の人口は7000万以上というけど「住民は自分の街がゼロカーボンシティと知っているのか」という疑問もあります。ネットワークの設立は、「宣言した」という段階から、実現の可能性や住民の巻き込みを考える段階に入ったようです。

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