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「インターン」は就活か教育か、ジョブ型採用で対立解消?

「インターン」は就活か教育か、ジョブ型採用で対立解消?

写真はイメージ

インターンシップ(就業体験)を採用に直結させたい産業界、採用とは無関係の教育に位置付けたい大学―。このギャップを解消する動きが、先進企業が導入しはじめたジョブ型採用を背景に起こってきた。文部科学省は博士課程学生の「ジョブ型研究インターンシップ」を試行する事業を、2021年度予算で概算要求する。将来、人数の多い修士課程学生や学部生に広がるかを占う意味でも、注目されそうだ。(取材=編集委員・山本佳世子)

就職・採用の活動は時間がかかり、学業を妨げるため産学の意見は長年、対立してきた。近年、浸透したインターンシップも、企業は採用につなげたい。大学側は「そうなったら就活が超長期化する」とはねつけ「インターンシップは教育」と強調してきた。

しかし情報や人工知能(AI)など高度なスキルを持つ人材ニーズが急伸。日立製作所やKDDIなどが、スキルを生かした特定の職務(ジョブ)を前提としたジョブ型採用導入に動きだした。これを受けて、経団連と大学側の就職問題懇談会が共同運営する「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は今春、ジョブ型インターンシップの試行を打ち出した。

一般的なインターンシップは学部3年生夏など数日で行われる。しかしジョブ型研究インターンシップは例えば、AIを研究する学生が企業の課題解決に2カ月程度をかけて取り組む。短い論文を仕上げるなど成果を出せば、ジョブ型採用につながる。つまりAI専門研究者という確約の下、新卒一括採用とは異なる雇用・給与体系で採用される―という仕組みだ。

これならまさに産学協同の研究を通じた人材育成で、大学も学生を送り出しやすい。情報や材料の高度人材なら企業ニーズもある。それが可能なレベルが博士学生だ。文科省は博士学生の就活時期にはしばりがないこと、博士教育の卓越大学院プログラムで同様の事例が好評なことも挙げる。活動内容はまさに企業の業務であり、有給となる見込みなのも魅力だ。

産学の協議会では、修士課程2年生が長期休暇中に行うインターンシップも提案している。将来の学部生への拡大も模索することになるだろう。大学の学びと就活のバランスをとり直す転機になってきそうだ。

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日刊工業新聞2020年9月24日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「ワンデーインターンシップ」という言葉は今春から使われなくなったが、これは「一日の実施では教育効果ゼロ、インターンシップとは呼べない」という大学側の主張が、就活サイト運営事業者などに受け入れられたためだ。何が意味ある活動なのか、その共通理解を産業界、大学、学生で作る機が熟しつつあると感じる。研究インターンシップについては、文科省事業の卓越大学院プログラムなどでよさが実感される博士学生から、という設定は適切だ。修士学生となると他大学からの進学も多く、修士研究に時間を費やす必要があると感じるが、はたしてどうなることだろうか。

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