不良品発生を最大4割減! 主要タイヤメーカーが推進するAI導入
タイヤメーカーが、タイヤの製造や検査の工程に人工知能(AI)を取り入れ、品質強化に取り組んでいる。ブリヂストンと住友ゴム工業は製造過程での品質向上にAIを活用する。一方、横浜ゴムとトーヨータイヤは検査工程に活用して欠損品や不良を検出する取り組みを進める。自動運転など車の進化とともにタイヤへの要求性能が高まっている中、タイムリーに高性能な製品を供給するため各社がAIを駆使している。(鎌田正雄、大阪・錦織承平)
最適条件を算出
ブリヂストンは「製造現場支援AI」を導入し、最適なタイヤの製造条件を算出することで品質向上に役立てている。例えばシート状のゴム部材をタイヤ形状に丸く組み合わせる工程では、シートのロットの切り替え時に不良率が高くなる課題があった。このため製造設備やタイヤの種類、季節変動などのデータを基に最適制御した予測式をAIが作成する仕組みを構築した。AI導入により、ロットが切り替わった最初のタイヤの不良率は、導入前と比べて41%削減した。
プロジェクト責任者の窪山英希システム制御開発部生産データ解析技術開発ユニットリーダーは「さまざまな工程でAI導入を加速し、さらに工程間を組み合わせたAI活用も強化する」と今後の展開を語る。
住友ゴム工業は、日立製作所とPTCジャパン(東京都新宿区)との協業で、AIやIoT(モノのインターネット)を活用して高品質・高効率の生産を実現する生産システムの構築を進めている。
モデル工場に位置付ける名古屋工場(愛知県豊田市)では、品質改善に関する実証実験を実施。タイヤ生産工程(混合・材料・成形・加流工程)で、AIなどを用いて製造条件と品質の相関性の解析を行った。データ収集・解析作業は約9割削減し、生産時に発生する不良品を30%低減した効果が出ている。
山田清樹製造IoT室室長は「先行して行った品質のテーマに加え、生産性向上や設備安定稼働、省エネのテーマでもAI活用を進めている」としている。2025年までに国内外の全工場へAIとIoTの導入を完了する計画。
検査員と併用
検査工程でもAIが威力を発揮する。精度や処理能力は検査員個人の経験やスキルの影響が大きい。AIにより検査能力の向上と効率化を実現できる。横浜ゴムは、タイヤの製造工程における外観検査でAIを活用する。
カメラで撮影したタイヤの外観画像をディープラーニング(深層学習)で欠損品の疑いのあるものを効率的に選別する。これに検査員が目視や手で確認し、欠損品を見つけ出す。既に国内工場の一部製造ラインに試験導入し、21年中に検査員とAIを併用した検査ラインを本格稼働させる。
トーヨータイヤは乗用車用タイヤなどを生産する仙台工場(宮城県岩沼市)内の金型工場で、金型の検査工程にAIを活用している。金型の寸法データをセンサーで計測し、AIで解析して不良の検出精度を高めている。
19年度にこの金型検査手法を導入したことで、過検出率は従来の6%から1%まで低減できた。検査時間の短縮と作業の軽減にもつながっている。
同社のマレーシア工場では生産設備の稼働状況を遠隔監視できるシステムを導入している。監視システムは今後、AIの活用も検討している。