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「設備投資促し好循環実現」を―政府の「異例の要請」

官民対話で実現なるか
「設備投資促し好循環実現」を―政府の「異例の要請」

官民対話の初会合

 政府は回復力が鈍い設備投資を促すため、産業界との意見交換会“官民対話”の初会合を開いた。過去最高の利益を達成しながら設備投資に慎重な企業の背中を押し、経済の好循環を実現する狙いだ。政府は老朽化設備の更新はもとより、インターネットや人工知能(AI)を活用した製造の自動化など、生産性向上に資する未来志向の投資を積極化するよう要望した。だが内外需とも先行き不透明な中で、積極投資に転じるかは不透明だ。

 安倍晋三首相は会合で「(高収益のわりに)設備投資の伸びは十分ではない。設備、技術、人材に積極的に投資し、民需主導の成長を確実なものとする必要がある」と指摘。老朽化した設備の更新や、ネット・AIを活用した“第四次産業革命”による生産性向上を推進するよう求めた。

 好業績を背景に、企業の内部留保は2014年度末に354兆円と過去最高に達する。利益を国内の設備投資に回さず、内部留保が積み上がったと政府はみる。経団連の榊原定征会長は「海外でのM&A(合併・買収)や投資は増えている」としたが、甘利明経済再生担当相は「(14年度までの2年間で)現預金は20兆円増えている」とし、企業が“カネ余り”の状況にあると指摘する。

 甘利担当相は続けて「増産投資ではなく、生産性を上げ、利益率を上げるための投資を求めている。企業がイノベーションを起こせば新しい需要も生まれる」とし、設備の更新や、第四次産業革命を通じた新たな産業の創出に期待を寄せる。

 だが、生産性革命や新産業創出は中長期的な政策課題だ。足元で鈍い設備投資が直ちに動きだす根拠となるのかは不透明。加えて企業の景況感が悪化する中で力強く新たな投資に向かえるのか、政府の要望が“即効薬”になるとは見通しにくい。

 経団連は政府に法人実効税率の早期の20%台への引き下げや規制改革など、設備投資に動きやすい環境の整備を求めた。今後、月1回のペースで開く官民対話で設備投資が積極化する機運は生まれるのか、世界経済の先行きと同様に、その着地点は視界不良だ。
日刊工業新聞2015年10月19日付総合2面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
賃上げに続き設備投資と、民間の経営判断に政府が「介入」する事態が続いている。ただ、設備投資は「要請」されて実現するものなのか。

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