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適量発注で食品ロス削減! AIが需要を予測する発注システムがすごい

棚卸しと連携、需要予測

ホワイトボックス型の人工知能(AI)を活用した需要予測型自動発注システムを手がけるシノプス。販売時点情報管理(POS)や天候などのデータを基に需要を予測し、適切な数量の商品を発注することで小売業の食品ロス削減などを実現している。2019年には棚卸しサービスのエイジスと業務提携した。島井幸太郎取締役管理部長に狙いを聞いた。(大阪・園尾雅之)

―提携の内容は。

「当社のシステムは商品在庫などデータの入力が正しければ十分な効果を発揮する。ただ、各種データはスーパーマーケットなど顧客側からも提供してもらうのだが、そのデータの精度が低いことが課題だった。棚卸し専門のエイジスと組み、現場のデータを連携することで、その精度を高められる」

―エイジスのメリットは何ですか。

「棚卸し業務は基本的に年2回しかないため、人材投入の時期が偏っていた。当社との連携により、商品の在庫や賞味期限切れを確認するといった定期的に必要な業務も受託でき、人材の稼働率を高められる」

―直近の状況を教えて下さい。

「当社のクラウド型サービスに、1時間ごとの在庫状況を確認できる『リアルタイム在庫機能』を7月に標準追加した。ただ運用してみると、システム上の在庫と店頭在庫の数字が予想以上にズレていることが分かった。数字がズレている商品を店頭で探して、システム上のデータを修正する業務をエイジスに担当してもらう」

―その取り組みはクラウド型サービスを強化する狙いもあるのでしょうか。

「一般的にサプライチェーン・マネジメント(SCM)は、供給側を起点に考えるため無駄な在庫が発生しやすい。そこで当社は需要側を起点に情報をそろえる『デマンド・チェーン・マネジメント(DCM)』を重視している。DCMの実現には、需要側である小売業でのシェア拡大が不可欠だ。そのため、導入コストが安いクラウド型サービスの提案を強化している」

―今後の展開は。

「入力データの精度を高めるほど需要予測の精度は高められる。すでに商品画像データを持つeBASEや、天候データを持つ日本気象協会ともデータ連携している。さらに同様の提携を検討中だ」

シノプス取締役管理部長・島井幸太郎氏

【チェックポイント/地道な作業、AIを支える】

“AI活用”というと、人間の仕事が奪われるようなイメージを持ちがち。だがAIの精度を高めるには、現場を正しく把握してデータ化する地道な作業が不可欠だ。シノプスとエイジスの提携は、その重要性を如実に示している。自動発注システムとしては、競合会社であるヴィンクスとの差別化戦略をどう打ち出すかも世間の注目を集めている。今回のようなアライアンス戦略の動向が、その勝敗を分ける決め手になるかも知れない。

日刊工業新聞2020年9月15日

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