新モデル投入! トヨタが主力HV「アクア」継続決定のワケ
トヨタ自動車は生産終了を一時検討していた主力ハイブリッド車(HV)「アクア」について、2021年夏にも新型モデルを市場投入し、生産・販売を継続すると決めた。2月に発売した新型コンパクトカー「ヤリス」の開発に伴い、同クラスのアクアをヤリスと統合する案が浮上していた。ただ激戦区のコンパクトカー市場で競争力を維持するには、2車種の構成が有効と判断。11年12月の発売以来初めて全面改良を行う。
新型アクアは生産子会社であるトヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)の岩手工場(岩手県金ケ崎町)で生産し、量産規模は月9000台とみられる。プラットフォーム(車台)やパワートレーンはヤリスと共通化し、利幅が薄いとされるコンパクトカーのコスト競争力を量産効果で高める。
新設計手法「TNGA」を用いた小型車向け新車台「GA―B」を採用し、高剛性と軽量化を両立。ヤリス向けに開発した排気量1500ccの3気筒エンジンや、HVシステムも搭載する見通し。
アクアは落ち着いたデザインや高い燃費性能を訴求し、女性やシニア世代などを主な顧客層に据える。一方、ヤリスはスポーティーなデザインや走行性能を特徴とする。2車種のすみ分けは明確で多様な顧客ニーズに対応できることから、アクアの存続を決めた。
コンパクトカー市場は登録乗用車販売の最大セグメントで、競合も相次ぎ新型車を開発している。ホンダが2月に主力車「フィット」を全面改良したほか、日産自動車も独自のHVシステム「eパワー」搭載の「ノート」を刷新する計画だ。
アクアは20年8月までに、国内で約150万台を販売したHVの看板車種だ。東日本大震災の発生から約9カ月後に発売し、東北地方で全量を生産。復興の一助となってきた重要な車種でもある。震災10年の節目となる21年に全面改良を実施し、地域産業の振興を一層後押しする。