コロナ禍で変わる食品産業、キユーピーが「フレッシュストック」で目指す成長
キユーピーは業務用の商品や技術を家庭向けに活用する取り組みを加速する。新型コロナウイルス感染拡大で外食産業が厳しい環境に置かれ、業務用の収益が低迷。こうした中、業務用の製品開発などで培った技術を家庭用に応用することで、収益性を高める。業務用が売上高の99・5%を占めるタマゴ事業では、利益率の高い加工品や家庭用商品を強化し、売上高営業利益率を現状の約7・5%から10%に引き上げることを目指している。(高屋優理)
まとめ買い促進
キユーピーは業務用事業で培った調理現場のニーズやプロ向けの技術などを活用する「フレッシュストック事業」をスタートし、16日から一部商品の販売を始める。フレッシュストック事業では、青果や精肉・鮮魚など売り場の枠を超えて、加工野菜や調味料、総菜を展開するのが特徴。野菜や肉を買う際に、フレッシュストックの調味料やパッケージ総菜などのまとめ買いを促進する。
キユーピーではコロナ禍で買い物の回数が減り、生活必需品のほか、保存できる日持ちを重視した商品の需要が増していると分析。フレッシュストックでは、賞味期間が常温で7カ月の調味料や、冷蔵で30日保つチキンの煮込みなどの総菜を展開する。
藤原かおり上席執行役員新規市場開発担当は「フレッシュストックで新たな技術を活用した」と話す。キユーピーは長期間保存が可能な技術を、業務用の製品開発の中で培ってきた。キユーピーはコロナ禍での新たな買い物ニーズに対応し、冷蔵庫に長期間ストックして、さまざま料理を楽しめる商品を開発、販売する。
加工品幅広く
フレッシュストックでは、これまでタマゴ事業で業務用として展開してきた、ゆでたまごのパッケージ商品「そのままパクッと食べられる ゆでたまご」を家庭用に販売する。キユーピーは4月から同商品のテスト販売を進めており、長南収社長は「ゆでたまごはありそうでなかった商品。テスト販売で手応えを感じている」と自信を見せる。
キユーピーのタマゴ事業は割卵して液卵などに加工し、原料として食品メーカーなどに販売する事業と、オムレツやたまごサラダなどに加工して販売する事業の二つに大別される。2019年11月期の事業売上高は999億円と全体の約18%を占めるが、営業利益は74億円と、利益率が調味料などの事業に比べて低い。
「タマゴ事業は加工の度合いが上がると利益率が上がる」(グループ主役化推進部の竹内裕担当部長)ことから、液卵よりも、加工品の方が利益率は高くなる。ゆでたまごも加工品の一つ。今後の事業拡大の方向性は、加工度合いが高くなる家庭用の加工品を幅広く展開することがカギとなる。
フレッシュストックは利益率を高める取り組みでもある。キユーピーは市場の変化に対応しながら、自社の技術や販路を生かし、利益の最大化を目指す。