釣り糸からヨットロープまで! 東洋紡が進めるPE繊維の用途開拓
ヨットロープ用、強度向上
東洋紡は高強力ポリエチレン(PE)繊維「イザナス」の用途開拓を進めている。同製品は釣り糸や大型船舶を港につなぐ係留ロープなど向けに製品展開してきたが、ヨットロープ用に性能を向上したタイプを投入した。
同社は強度や弾性率に優れたスーパー繊維のポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維「ザイロン」と高強力PE繊維「イザナス」「ツヌーガ」を手がける。イザナスは有機繊維として最高レベルの強度と弾性率を持ち、比重1以下で水に浮くほど軽い。衝撃吸収や耐摩耗性、耐久性に優れる。
生活・環境ソリューション本部の黒木忠雄繊維機能材事業総括部長は「PE繊維は米中やオランダのメーカーと競合しており、競争が激しい。対抗するためには性能向上が欠かせない」と話す。
繊維は単糸と呼ばれる細い糸を何十本より合わせて1本の糸に仕上げる。単糸の本数を増減させることで太さを変える。単糸が細いと糸同士が擦れて切れやすくなるが、太い糸同士だと切れにくく耐摩耗性が向上する。
4月に発売した釣り糸向け製品は、単糸の太さが従来品より3・5倍と7倍の2種類がある。釣り糸は岩などに擦れるため、より耐摩耗性が必要となる。一方で「単糸が太いと耐摩耗性が増すが、細いと引っ張り強度が増す。太くて強度のある糸を作るのが難しい」(黒木部長)という。
ヨットロープ向けに開発した新製品は、従来品より強度を約29%向上させた。同社によると、高強力PE繊維では世界一の強度を誇るとする。主要市場となる欧米を中心に、国内外のロープメーカーへサンプル出荷を含め提案していく。
今後は鉄などの金属ワイヤを高強力PE繊維に置き換える需要を狙う。黒木部長は「PE繊維は引っ張り続けると伸びてしまうクリープという現象が起こる課題がある。耐クリープ性能を向上させ、海洋上での建造物の固定用途などに参入したい」と意気込む。(大阪・新庄悠)