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ウェブ手続きで携帯MNP手数料無料でも…“現状維持バイアス”で効果は未知数

総務省は、携帯通信会社を変更する際に従来の電話番号をそのまま使える同番号移行制度(MNP)の手数料を現行の3000円から引き下げる方針を示し、27日の有識者会議で大筋合意を得た。消費者がウェブサイトでMNP手続きをする場合は無料に、店舗や電話で行う場合は1000円以下とする。今後は、これまでの有識者会議での議論を今秋に報告書案としてまとめ、意見募集を経て、MNPガイドラインの改正を進める見通し。

総務省は携帯通信市場の競争を促進する観点で、MNPによる通信会社の乗り換えの円滑化を目指してきた。

日刊工業新聞2020年8月28日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
総務省の有識者会議は7日、携帯電話番号を変えずに他の携帯電話会社に乗り換える「番号持ち運び制度(MNP)」で、インターネットで手続きすれば手数料を無料とすることなどを盛り込んだ報告書案を了承した。利用者が他社に乗り換える障壁をなるべく低くすることは競争を促進する上で不可欠であり、妥当な判断を言えよう。ただ、これでMNPが増えるかというと、それは未知数だ。公正取引委員会が2年前に実施したアンケート調査では、通信料金や通信品質にかかわらず、現在契約している通信会社を乗り換えるつもりがないと答えた大手携帯電話会社の利用者は約半数存在した。料金体系の複雑さや手続きの煩雑さが強い現状維持バイアスにつながっている可能性がある。この現状維持バイアスを打ち破るには、金銭的な負担だけでなく、時間や心理的な負担など、あらゆる面でスイッチングコストを引き下げていくしかない。

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