1万台の室外機からデータを取る日立の業務用空調ビジネス、学習モデルは何に生かす?
空調機器や冷凍機を止めてはならない―。日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS、東京都港区、谷口潤社長、03・3502・2111)は、業務用空調・冷凍機器の運転データを活用したIoT(モノのインターネット)サービス「エクシーダ」の拡販に注力している。
エクシーダは監視機器を取り付けた空調・冷凍機器の運転データを蓄積・分析してさまざまな機能を提供する。第1弾として、2018年から従来の遠隔監視に予兆診断の機能を組み合わせたサービスを提供している。
センサーで運転状態を24時間監視し、故障が起きると管理者にエラーコードを通知して被害の拡大を食い止める。対象機器であれば、運転データを一定期間蓄積することで予兆診断も利用可能だ。
予兆診断では過去の正常な運転データを基に作成した学習モデルと、現在の運転データを局所部分空間法で比較。冷媒の漏えいや熱交換不良のような故障につながる異常を検知すると管理者に通知する。比較の仕組みは日立パワーソリューションズ(茨城県日立市)の大型発電装置の予兆診断技術を活用した。
主な提案先はコールドチェーン(低温流通)や医療機関など、空調・冷凍機器が欠かせない現場。これらは急な故障や整備で機器の停止期間が長引くほど事業への影響が増す。故障や、故障につながる異常が早く見つかるほど管理者側の負担は軽くなる。
日立GLSの検証では、エクシーダによって不具合が報告される2年半前から予兆を検知した例もあった。すぐ適切な対処を取ることで、性能低下や経年劣化を抑えられる。整備を要する場合でも計画的に準備でき、突発的な故障が発生した場合より機器の停止期間を短くできる。
急な故障が減ることで、保守担当者の働き方改革にも役立つ。突然の故障で生じる事業者の往来を減らすことで、新型コロナウイルス感染症対策にもつながるという。
3月末時点で約1万台の室外機からデータを集めている。空調ソリューション事業部システムソリューション企画部の進藤雅文部長代理は「利用台数が増えることで学習モデルの制作への活用も期待できる」と語る。
学習期間の短縮の要望は多いが、現時点ではデータの収集などに1年かかる。パターン化が難しい対人空調の予兆精度のさらなる向上など、機能の進化に向けても多くのデータが必要だ。
今後の採用拡大に向けて導入事例の積極的な紹介や機能拡充を進めている。最近では改正フロン排出抑制法に対応した管理システムを加え、管理者にサービス導入の利点を訴求しやすくなった。
エクシーダは日立製作所が力を注ぐIoT共通基盤「ルマーダ」のソリューションの一つでもある。進藤部長代理は「台数増加によってビッグデータとして他の案件への活用も見込める」と期待を寄せている。