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「半沢直樹」の意外な影響、M&Aのイメージを変えた?

「半沢直樹」の意外な影響、M&Aのイメージを変えた?

日本M&Aセンターが入っている鉄鋼ビルディング(東京・丸の内)

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で落ち込んでいた日本企業同士のM&A(合併・買収)が増加に転じる兆しを見せ始めた。緊急事態宣言発令で交渉が停滞していたが、中小企業の後継者難に伴う事業承継に加え、将来を見据えた事業見直しが幅広い業種で加速していることも背景にあるようだ。

【1―7月6.6%減】

M&A助言会社のレコフの調べでは、国内企業同士のM&A件数は今年1―7月、前年同期比6・6%減の1653件となった。4月と5月にいずれも前年同月比で2割の大幅減。緊急事態宣言が全国で解除されると、6月には7・0%増とプラスに転じた。7月は1・6%減と再び減少したが、小幅な減少にとどまった。

5月下旬に緊急事態宣言が解除され、事業承継などの交渉がやりやすくなり、減少傾向に歯止めがかかりつつある。新型コロナによる事業環境の激変を受け、上場企業が子会社や一部事業を切り出して売却する動きも目立っている。

【事業譲渡活発化】

中小企業を中心にM&A仲介を手がける日本M&Aセンターの幹部は「企業が手元資金の確保を重視し、主力部門以外の事業を譲渡する動きが増えている」と説明。土木関係や人材派遣などの業種で事業譲渡が活発化していると話す。買い手サイドは、従来手がけてきた事業の周辺に位置する分野を取り込み、規模拡大で収益力向上につなげようとしている。

【イメージ改善】

M&Aに対する一般的イメージも変わりつつある。「ハゲタカファンド」が取りざたされた十数年前には「買い手企業は悪」との印象が圧倒的だったが、現在、民放で放映中のドラマ「半沢直樹」では、銀行から証券会社に出向した主人公がIT企業のM&A合戦に加わるシーンが登場。買い手企業だけでなく、売り手企業にとってのメリットも比較的丁寧に描かれた。

このドラマで証券業務の監修を担うのは、三菱UFJフィナンシャル・グループのインターネット証券、auカブコム証券だ。ドラマ制作陣への助言に当たってきた同社の塚田正泰専務は「主人公のように『顧客のため』を考え、行動する証券マンがいることが伝わってくれれば」と話している。

日刊工業新聞2020年9月4日

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