ニュースイッチ

コロナ禍でもオンライン化は進めない葬儀社の思い

新型コロナウイルス感染拡大が葬儀業界に大きな影響を与えている。人の密集を避けるためオンライン配信など新たな葬儀の形を提案する葬儀社が増えている。しかしティアの冨安徳久社長は、その流れに異を唱える。「オンライン化は進めない」と断言する冨安社長に考え方を聞いた。

―足元の状況は。
「3―5月は葬儀参列者が減り、売り上げは減少した。近年の葬儀規模の縮小傾向が、今回の新型コロナによって加速している。これを受け当社は元々無借金だったが、即座に資金調達を実施した。年内は店舗の家賃の引き下げを継続してもらえるよう(土地所有者に)お願いしている」

―今後の見通しは。
「年末までに必ず単価と売り上げを新型コロナ前の水準まで戻す。そのため感染対策はしっかりした上で、葬儀は不要不急ではないと従業員やお客さまに訴える。併せて固定費のスリム化を進める。広告や駐車場の契約状況を精査し、過剰なものは削る。売り上げが戻れば新型コロナ前より利益は増える」

―葬儀のオンライン配信サービスに乗り出す同業が増えています。
「当社も海外の方に対応するため設備は整えている。ただ、進んではオンライン化に取り組まない。対面してきちんとお別れをするのが原則。これを怠ると東日本大震災の時のように、心の行き場を無くす人々が出てくる。葬儀への向き合い方の根本は変えてはいけない」

(聞き手=名古屋・岡林里奈)
日刊工業新聞2020年8月10日

編集部のおすすめ