米サンディスクが身売り検討か。どうなる東芝のメモリー事業
米メディアが報道、候補にマイクロンやWDなど。東芝の戦略に大きな影響も
米サンディスクが身売りを検討しているとブルームバーグが報じた。サンディスクは東芝とNAND型フラッシュメモリーの工場へ共同投資しており、仮に売却が決まれば東芝の半導体戦略に大きな影響を与える。
売却先候補に挙がっているのは、旧エルピーダメモリを買収し東芝の競合となる米マイクロン・テクノロジーやハードディスクドライブ(HDD)大手の米ウエスタン・デジタルなど。ただ身売りには東芝の同意が必要とみられる。
東芝は、フラッシュメモリーの投資で初期の段階からサンディスクとパートナーを組んできており、17年度にも稼働を目指している新工場の建設も共同で行う意向だ。東芝は1社単独で投資しない方針を貫いているのに加え、今回の不正会計の問題で各事業で構造改革が避けられない。
フラッシュメモリーは東芝の営業利益の6割以上を稼ぐ大黒柱だが、直近では単価下落で2015年4ー6月期は減益になった。投資には巨額の資金が必要で、メモリー事業を分社して外部資本を呼び込むというストーリーも考えられる。サンディスクの身売り話は、東芝に重大な選択を迫る可能性が高い一方で、今後の枠組み次第ではチャンスにもなり得る。
2009年1月29日。当時、東芝社長だった西田厚聰氏は、巨額の営業赤字を計上した半導体事業の収益改善策を示しながら「日本の半導体産業の生き残りも考える」と語気を強め、自社のシステムLSIとディスクリート(個別半導体)の分社も辞さない考えを示した。結局、計画は実現しなかったが、今回の不適切会計問題が、リストラの流れを引き戻し半導体再編の契機となる可能性がある。
現在、東芝にとって半導体事業は、営業利益の6―7割を稼ぎ出す大黒柱だ。ただ、その収益源はNAND型フラッシュメモリーに偏っている。NANDフラッシュは、今後もスマートフォン向けが底堅く推移するほか、モノのインターネット(IoT)などの拡大を背景に、外部記憶装置(ストレージ)向けの需要拡大が確実視される。
また東芝はライバルの韓国サムスン電子に対して「技術力で優位。特に生産技術は強い」(駒田隆彦テクノ・システム・リサーチアシスタントディレクター)状態にあり、今後も成長を期待できる。
一方、LSI、ディスクリートは赤字体質が続いてきた。両事業ともに13年度までに工程集約や得意分野に製品を絞り込む構造改革を実施し、14年度には黒字化が見えつつあった。しかし今回の不適切会計問題で第三者委員会は、半導体分野では両事業を中心に在庫評価などで問題があり、08年度から14年度第3四半期(4―12月)までで計360億円の利益水増しがあったと指摘した。東芝が収益改善に苦慮していた様子がうかがえる。
確かに両事業には明るい兆しがある。LSIでは車載向けや画像センサー、ディスクリートは車載向けや白色発光ダイオード(LED)などの販売が上向いている。しかし「全体としてみれば利益率は低い」とIHSグローバルの南川明主席アナリストは分析する。
もともと「NANDフラッシュに集中すべきだ」(東芝幹部OB)との指摘は多い。また不採算事業を温存したことが不適切会計を引き起こした遠因となった側面もあり、再びLSIとディスクリートのリストラや事業強化が必要になる可能性がある。
LSIでは、幅広い顧客ニーズに対応できる強い標準品の存在が不可欠。またパワー半導体では開発スピードを高めることが必要。東芝がこうした点で競争力を高めるため「海外企業との提携が有力な選択肢になる」(南川主席アナリスト)。
また駒田アシスタントディレクターはパートナー戦略について「ルネサスは有力な候補になり得るのではないか」と指摘する。ルネサスは車載や産業機器向けマイコンで世界トップ水準のポジションにあるが、アナログ・パワー半導体の品ぞろえが課題で、東芝と補完関係を築ける。
6月24日付でルネサス会長兼最高経営責任者(CEO)に就いた遠藤隆雄氏は「足りない技術や弱い技術を補完するため、他社との提携をタイミングを計って検討したい」と意欲をみせていた。東芝はどう動くか―。
売却先候補に挙がっているのは、旧エルピーダメモリを買収し東芝の競合となる米マイクロン・テクノロジーやハードディスクドライブ(HDD)大手の米ウエスタン・デジタルなど。ただ身売りには東芝の同意が必要とみられる。
東芝は、フラッシュメモリーの投資で初期の段階からサンディスクとパートナーを組んできており、17年度にも稼働を目指している新工場の建設も共同で行う意向だ。東芝は1社単独で投資しない方針を貫いているのに加え、今回の不正会計の問題で各事業で構造改革が避けられない。
フラッシュメモリーは東芝の営業利益の6割以上を稼ぐ大黒柱だが、直近では単価下落で2015年4ー6月期は減益になった。投資には巨額の資金が必要で、メモリー事業を分社して外部資本を呼び込むというストーリーも考えられる。サンディスクの身売り話は、東芝に重大な選択を迫る可能性が高い一方で、今後の枠組み次第ではチャンスにもなり得る。
どうなる半導体の構造改革
日刊工業新聞2015年7月28日付
課題のシステムLSIとディスクリートに動きも
2009年1月29日。当時、東芝社長だった西田厚聰氏は、巨額の営業赤字を計上した半導体事業の収益改善策を示しながら「日本の半導体産業の生き残りも考える」と語気を強め、自社のシステムLSIとディスクリート(個別半導体)の分社も辞さない考えを示した。結局、計画は実現しなかったが、今回の不適切会計問題が、リストラの流れを引き戻し半導体再編の契機となる可能性がある。
現在、東芝にとって半導体事業は、営業利益の6―7割を稼ぎ出す大黒柱だ。ただ、その収益源はNAND型フラッシュメモリーに偏っている。NANDフラッシュは、今後もスマートフォン向けが底堅く推移するほか、モノのインターネット(IoT)などの拡大を背景に、外部記憶装置(ストレージ)向けの需要拡大が確実視される。
また東芝はライバルの韓国サムスン電子に対して「技術力で優位。特に生産技術は強い」(駒田隆彦テクノ・システム・リサーチアシスタントディレクター)状態にあり、今後も成長を期待できる。
一方、LSI、ディスクリートは赤字体質が続いてきた。両事業ともに13年度までに工程集約や得意分野に製品を絞り込む構造改革を実施し、14年度には黒字化が見えつつあった。しかし今回の不適切会計問題で第三者委員会は、半導体分野では両事業を中心に在庫評価などで問題があり、08年度から14年度第3四半期(4―12月)までで計360億円の利益水増しがあったと指摘した。東芝が収益改善に苦慮していた様子がうかがえる。
確かに両事業には明るい兆しがある。LSIでは車載向けや画像センサー、ディスクリートは車載向けや白色発光ダイオード(LED)などの販売が上向いている。しかし「全体としてみれば利益率は低い」とIHSグローバルの南川明主席アナリストは分析する。
もともと「NANDフラッシュに集中すべきだ」(東芝幹部OB)との指摘は多い。また不採算事業を温存したことが不適切会計を引き起こした遠因となった側面もあり、再びLSIとディスクリートのリストラや事業強化が必要になる可能性がある。
LSIでは、幅広い顧客ニーズに対応できる強い標準品の存在が不可欠。またパワー半導体では開発スピードを高めることが必要。東芝がこうした点で競争力を高めるため「海外企業との提携が有力な選択肢になる」(南川主席アナリスト)。
また駒田アシスタントディレクターはパートナー戦略について「ルネサスは有力な候補になり得るのではないか」と指摘する。ルネサスは車載や産業機器向けマイコンで世界トップ水準のポジションにあるが、アナログ・パワー半導体の品ぞろえが課題で、東芝と補完関係を築ける。
6月24日付でルネサス会長兼最高経営責任者(CEO)に就いた遠藤隆雄氏は「足りない技術や弱い技術を補完するため、他社との提携をタイミングを計って検討したい」と意欲をみせていた。東芝はどう動くか―。