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全社テレワーク制度化にオフィス半減、富士通社長の真意

富士通の経営改革がコロナ禍で進化を遂げている。感染拡大防止で全社に広がったテレワーク(在宅勤務)を常態化し、国内従業員の9割近くにのぼる約8万人を対象に、場所を問わない新しい勤務形態「ワーク・ライフ・シフト」を導入した。さらにコロナ禍で先送りになっていた国内特化型の新会社「富士通Japan」の10月発足を決定した。それぞれの狙いを富士通の時田隆仁社長に聞いた。

―全社テレワークの制度化に迷いはなかったですか。
「迷わなかった。私の意見でもあるが、従業員のうち3万5000人に行ったアンケートから導き出した結果でもある。場所にとらわれない働き方は、海外4万人の従業員の働き方と基本的には同じだ。グローバル展開している会社としては、そもそも働く場所を問うべきではない」

―全社テレワークに加え、全席をフリーアドレス化し、2022年度末までにオフィス規模を現状から半減する目標も話題です。3年後の見通しは。
「半減自体が目的ではなく、結果としてそうなるのだ。もとより、半減してもそれが完成形ではない。従業員が働きやすくなることが第一。目標を立てることは重要だが、常に中間点でしかない」

―在宅勤務中にすべてがトレース(追跡)されると、監視の色合いが強まりませんか。
「そんなことをしたいわけではない。上司と部下との1対1のコミュニケーションなどを通して、従業員と会社との“トラスト(信頼)”を築いていくことが重要だ。併せて時間管理の本質を議論し、職務上の役割に応じて報酬が決まるジョブ型人事制度を全社に拡大するのが良いと判断した」

―富士通Japanの発足への思いは。
「ソリューションはグローバルだが、各国ごとのローカライズは必要だ。そこをきちんと事業の中に埋め込むために米国やアジアなど六つのリージョン(地域)があり、日本もその一つだ。ジャパンリージョンを土台に国内事業部門を統合し新会社を発足する」

―時田体制の布陣が整い、本格展開といっていいのでしょうか。
「創業85周年の6月19日に全社員へのメッセージに『ONE 富士通』という言葉を就任以来、初めて使った。全世界の全従業員が見る方向性が定まり、それを体現しようと思った。準備は遅ればせながら整った」

【記者の目/グローバル起点、一手に注目】
就任時に「全従業員13万人の思考プロセスをひっくり返す」(時田社長)と明言し、全社改革に向けて、矢継ぎ早に手を打ってきた。全社テレワークの常態化はコロナ禍による事業環境の変化を逆手にとった改革の一手で、驚きは社内外に広がった。グローバル起点の次の一手にも注目したい。(編集委員・斉藤実)

日刊工業新聞2020年7月28日

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