コロナ禍の新卒研修。ITベンチャーが気づいた良い点、悪い点
エイチームは2020年度に57人の新卒者を迎えた。入社式はオンライン。新卒は入社して2カ月まともに出社できず、直接会えない同期もいた。だが顔と名前は覚えやすい。ビデオ会議では正面に向き合って会話するためだ。顔のすぐ下には氏名が表示されている。普通の世代とは少し違う社会人デビューを迎えている。(取材・小寺貴之)
エイチームはゲームや自動車、金融、結婚、ヘルスケア、就職、葬儀、自転車販売などの30以上の事業分野を抱える。従業員は1118人。この4年で倍以上に増えた。多様な事業を多様な人材が支える成長中のITベンチャーだ。中久木健大人事部長は「この3―4年で人事体制を整えてきた」と振り返る。
新卒向けには1カ月間の研修プログラムを用意している。コロナ禍を受け、急きょオンラインに切り替えた。ビジネススキルやプログラミングなど、30以上の研修を実施。人事企画の生田豪氏は「名刺交換や営業研修以外は、だいたいオンラインで実施できた」と胸をなで下ろす。
知識や考え方を教えるプログラムはオンラインで実施しやすい。名刺交換など、実践部分は工夫が必要だ。課題は新卒と社員の交流だ。中久木部長は「新卒者がエイチームを信用する早さが変わるかもしれない」と指摘する。新卒は上司や先輩以外にも、職場でいろんな出来事を見聞きし、会社や社員のいいところを見つける。自分が直接助けてもらわなくても、人と人のやりとりを聞いて会社の雰囲気をつかんでいく。
オンラインだと画面にない情報は届かない。今後、社内の勉強会やイベント、職種横断的なプログラミング研修など、いろんな人をみる場を作っていく。
コロナ後のニューノーマル(新常態)に向けた、社会の歪みを受けた最初の世代だ。何か不備があると「コロナで教わらなかったから」とささやかれる可能性がある。コロナの世代は、ゆとり世代のようにやゆされる世代になるかもしれない。中久木部長は「人事は一人ひとりの個性と向き合うことが大切。レッテルを貼るのは不毛だ」と断言する。