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錦織選手も愛用するエアウィーヴ、海外展開加速―日本で成功した広告戦略とは

「じわり」から「一気にマス広告」の法則
 テニスの錦織圭選手をはじめトップアスリートを起用した広告宣伝で知られるエアウィーヴ(東京都中央区)が海外展開を加速している。2015年度だけでも現時点までに中国、米国など3カ国に19店舗をオープン。11月には台湾6店舗目、年末にはシンガポール出店も控え、年度末には海外48店舗体制となる見通しだ。高反発の機能性マットレスという従来なかった商品領域で国内市場を切り開いた同社が次に目指すのは海外市場。文化や生活様式に深く根ざした「眠り」の世界で「日本発」の価値観が受け入れられるには、地域に合わせたきめ細かな市場戦略がカギとなりそうだ。
 

対日感情が好転


 9月末―。中国で販売されるエアウィーヴ商品に「メード・イン・ジャパン」を表記したタグが付けられることになった。現地消費者の対日感情が好転しつつあるタイミングをとらえ、日本製であること前面に打ち出す戦略だ。

 訪日観光客の急増も追い風に、日本を訪れた中国の消費者が同社製品に触れ、今度は地元で買い求める効果も期待している。

 一連の海外での出店攻勢により、2018年の売り上げ目標は15年比ほぼ倍増の300億円を見込んでいる。うち40億円は海外で稼ぎ出す構えだ。

 新興企業である同社が寝具業界で老舗企業の牙城を切り崩しつつある原動力は、繊維状の樹脂を用いた独自の商品開発力と大学との共同研究を通じて科学的な検証を重ね、開発に反映する手法。

 さらに愛用者がじわり広がり始めたタイミングで一気にマス広告を打つ。この手法は海外でも有効と考えており、この10月からは米国スタンフォード大学医学部の睡眠研究所での臨床研究を寝具メーカーとして初めて実施する。

ミレニアム世代


 米国とアジア、それぞれを視野に入れるが、消費者へのアプローチ方法は異なる。米国では「ふかふかの寝心地を求める中高年層の意識を変えるのは容易ではない」(丸山宏常務執行役員)として、むしろ健康意識の高い「『ミレニアム世代』に照準を合わせる」(同)。

 米国1号店の地を最新トレンドの発信地であるニューヨークのソーホーに求めたのもこのためだ。他方、アジアでは、高品質の証である「メード・イン・ジャパン」を武器に、富裕層から商品認知度を高めることにしている。
 

インタビュー/社長・松田孝裕氏「中国の消費意欲旺盛」


 海外展開について松田孝裕社長に聞いた。
 ―中国の景気減速の影響はありませんか。
 「むしろ9月初めの抗日戦勝70周年式典を境に客足が戻ってきた。9月に開店した成都の店舗は、初来店客が翌日には友人数人を伴って再び訪れるなど消費意欲は旺盛だ」

 ―事業の急拡大に伴い、生産拠点の増強や新設が必要になるのでは。
 「18年の売上高300億円までは愛知県と滋賀県にある国内3工場で対応できる」

 ―日本と海外、市場開拓における違いは。
 「海外ではなじみの薄い商品だけに、特性を理解してもらうことから始めなければならない苦労はあるが、消費者の支持を得られれば、成長スピードは日本を上回るのではないか」
(文=編集委員・神崎明子)
日刊工業新聞2015年10月08日 モノづくり基盤・成長企業面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
先日復帰戦を終えた浅田真央選手も愛用者。荷物の一番上にエアウィーヴを積み空港内を歩く姿が印象に残っています。海外では寝心地の好みや、寝具に求める機能も違いそうです。

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