ソニー平井社長「IoT新端末でリーダーシップをとりたい」
スマホの構造改革「順調」を強調も売却否定せず
ソニーの平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は7日に都内で日刊工業新聞などのインタビューに応じ、課題のスマートフォン事業について「構造改革は計画通りだ。また新商品への評価は高く、期待が持てる」と明るい見通しを示した。
ただ、改革が失敗して業績が悪化した場合には、事業売却という選択肢も否定しなかった。スマホ事業ではスマホの次に来る端末に関し「モノのインターネット(IoT)を使った端末も考えたい。ソニーが(次世代端末で)リーダーシップを取れるよう議論している」と語った。
電機部門全体の評価については「道半ばだが、リストラ効果や強い商品群の投入で良い方向に向かっている。継続的に利益を出すビジネスに転換し、完全復活という評価を得たい」と話した。
*今年2月に構造改革を打ち出した時と局面は変わったか
ソニーは高収益企業への変革を目指し、事業戦略の再構築を打ち出した。成長領域を見直し電子デバイスを中心に4分野で稼ぐ力を強める一方、スマートフォンとテレビの両事業は売却も視野に入れて赤字体質からの脱却を図る構えだ。競争力の高い分野に絞り込む戦略は評価できるが、戦略の見直しは遅きに失した感もある。ソニーブランドは再び世界で輝きを取り戻せるのか。
イメージセンサーなどデバイス分野はスマホ市場で高いシェアを有しており、稼ぎ頭としてけん引するのは間違いない。ただ画素数競争が限界に近づき、技術革新の余地は狭まっている。生産性を高めて価格競争に対応しつつ、新技術を創出し競合を引き離す必要がある。それには多大な成長投資が不可欠だ。
計画では成長領域に資本を傾斜配分する考えを示した。デバイスやゲームなど優位性の高い領域に投資を集中させる戦略は競争力強化に寄与し、収益改善を確かなものにするだろう。一方で価格競争に陥ったスマホ事業に固執したことで投資を無駄にし、技術者らの人員削減にもつながった。もっと早い段階で戦略を再構築すれば早期の再生につながったはずだ。
各事業の資本効率が悪化した場合は、事業撤退も選択肢に入れた。意思決定を速めてリスクを最小限にしようとする経営陣の意識が読み取れる。不採算事業を早期に切り出し成長余力の高い事業に確実にシフトできれば、回復軌道に乗る公算が大きい。その先の成長は分社化された各事業会社が経営の機動性を高め、革新的な商品を生み出していくしかない。
【分社化で縦割り意識の高まり懸念】
平井一夫社長が収益基盤の強化と再成長に向けて打ち出した分社化策。2014年7月に子会社化したテレビ事業が、10年間続いた赤字から脱し15年3月期に黒字化するめどが立ったことが、この戦略を後押ししたことは間違いない。
ソニーの各事業体はまだまだ大きく、子会社化することで経営判断やコスト削減が加速する効果はある。ただ、その規模ゆえに各事業の縦割り意識が強くなり、ガバナンスがきかなくなる恐れは十分にある。
平井社長は「求心力を高め自立する部分はして、ワンソニーとしてやる部分はやる」と自信をみせる。しかし度重なる構造改革や経営目標の変更により、社内意欲の低下や技術者の流出といった負の側面も出ている。一枚岩として成長軌道に乗せられるかどうかは不安が残る。
スマホという危険因子はあるが、エレクトロニクス事業は安定の兆しが見えてきた。平井社長がソニーのDNAとして掲げる「革新性と独自性」を成長ドライブにするのなら、各事業を融合し付加価値を高めるような、横連携を強化する仕組みの構築が必要だろう。
ただ、改革が失敗して業績が悪化した場合には、事業売却という選択肢も否定しなかった。スマホ事業ではスマホの次に来る端末に関し「モノのインターネット(IoT)を使った端末も考えたい。ソニーが(次世代端末で)リーダーシップを取れるよう議論している」と語った。
電機部門全体の評価については「道半ばだが、リストラ効果や強い商品群の投入で良い方向に向かっている。継続的に利益を出すビジネスに転換し、完全復活という評価を得たい」と話した。
*今年2月に構造改革を打ち出した時と局面は変わったか
日刊工業新聞2015年2月19日付
ソニーは高収益企業への変革を目指し、事業戦略の再構築を打ち出した。成長領域を見直し電子デバイスを中心に4分野で稼ぐ力を強める一方、スマートフォンとテレビの両事業は売却も視野に入れて赤字体質からの脱却を図る構えだ。競争力の高い分野に絞り込む戦略は評価できるが、戦略の見直しは遅きに失した感もある。ソニーブランドは再び世界で輝きを取り戻せるのか。
イメージセンサーなどデバイス分野はスマホ市場で高いシェアを有しており、稼ぎ頭としてけん引するのは間違いない。ただ画素数競争が限界に近づき、技術革新の余地は狭まっている。生産性を高めて価格競争に対応しつつ、新技術を創出し競合を引き離す必要がある。それには多大な成長投資が不可欠だ。
計画では成長領域に資本を傾斜配分する考えを示した。デバイスやゲームなど優位性の高い領域に投資を集中させる戦略は競争力強化に寄与し、収益改善を確かなものにするだろう。一方で価格競争に陥ったスマホ事業に固執したことで投資を無駄にし、技術者らの人員削減にもつながった。もっと早い段階で戦略を再構築すれば早期の再生につながったはずだ。
各事業の資本効率が悪化した場合は、事業撤退も選択肢に入れた。意思決定を速めてリスクを最小限にしようとする経営陣の意識が読み取れる。不採算事業を早期に切り出し成長余力の高い事業に確実にシフトできれば、回復軌道に乗る公算が大きい。その先の成長は分社化された各事業会社が経営の機動性を高め、革新的な商品を生み出していくしかない。
【分社化で縦割り意識の高まり懸念】
平井一夫社長が収益基盤の強化と再成長に向けて打ち出した分社化策。2014年7月に子会社化したテレビ事業が、10年間続いた赤字から脱し15年3月期に黒字化するめどが立ったことが、この戦略を後押ししたことは間違いない。
ソニーの各事業体はまだまだ大きく、子会社化することで経営判断やコスト削減が加速する効果はある。ただ、その規模ゆえに各事業の縦割り意識が強くなり、ガバナンスがきかなくなる恐れは十分にある。
平井社長は「求心力を高め自立する部分はして、ワンソニーとしてやる部分はやる」と自信をみせる。しかし度重なる構造改革や経営目標の変更により、社内意欲の低下や技術者の流出といった負の側面も出ている。一枚岩として成長軌道に乗せられるかどうかは不安が残る。
スマホという危険因子はあるが、エレクトロニクス事業は安定の兆しが見えてきた。平井社長がソニーのDNAとして掲げる「革新性と独自性」を成長ドライブにするのなら、各事業を融合し付加価値を高めるような、横連携を強化する仕組みの構築が必要だろう。