マスクは負担…。熱中症とコロナ対策を両立するゼネコンの苦闘
ゼネコン大手各社は猛暑に備え、新型コロナウイルス感染拡大防止と熱中症対策を両立させる作業現場の環境づくりに力を入れる。各社は息苦しさの緩和や唾液の飛散を抑制するフェースガード、マウスシールドなどの防護具を新たに採用する。ただ、防護品で防ぎ切れず感染が広がれば、工事が中断に追い込まれる可能性もある。密集を避けるため、人手不足の解消、安全対策として進めるロボット化や遠隔操作などの技術開発を急いでいる。(編集委員・山下哲二)
【作業員の負担大】
作業現場では消毒の徹底や集団の朝礼を中止するなどコロナウイルス感染対策に取り組むが、確認作業などがあるため、密接になる場面が避けられない。
とはいえ一般的なマスクの着用は作業員の負担が大きい。WBGT(暑さ指数)測定器などで警告した上で、フェースガードや冷感マスクなどの防護品で対応する。
鹿島は全社で一般的なマスク着用に加え、現場では最適なマウスシールド、フェースシールドを採用する。清水建設は屋外作業現場でマウスシールドの採用を決めた。顎に装着するプラスチックパッドに口の周りを覆う透明なプラスチックフィルムを定着させ、息苦しさを感じずに唾液の飛散を防止する。
大成建設は協力会社などに肌が涼しく感じる冷感マスク、マウスシールド、ネッククーラーといった対策品のあっせんを始めた。大林組も独自のガイドラインを策定し、透明型マスク着用などの基準を設定した。
【IoT活用】
竹中工務店は「防護品の整備だけでは万全でない」といい、作業現場の環境整備の重要性を指摘する。
従来の熱中症対策にコロナウイルス感染対策が加わり、重要性が鮮明になったのがIoT(モノのインターネット)やロボットの活用。同社は遠隔作業や工事の進捗管理をはじめ、大勢の朝礼・会議の代替手段としても活用を検討している。
【生産変革推進】
また、現場での行動制限による工事への影響も懸念される。鹿島は機械化、自動化に取り組み、土木分野では機械の自動運転を核に、次世代建設生産システムの推進や施工の機械化・自動化、コンクリート部材のプレキャスト化を急ぐ。建築分野でも各種施工ロボットの導入、遠隔管理技術など生産プロセスの変革を推し進める。
清水建設のタブレット端末を活用した「山岳トンネル遠隔立会システム」は検査・管理業務の効率化を図るツールだが、コロナ対策に貢献する技術として適用拡大を目指す。