三菱スペースジェット開発縮小、部品メーカー「量産はやりたくない」の本音
期待の一方で…
三菱重工業は小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発で人員を半減し、米国開発拠点も一部を残し閉鎖する。スペースジェットの納入はこれまで設計変更などが相次いだため6度延期し、現在は21年度以降としている。90席クラスの量産を停止するとともに、北米向けに納入を計画する70席クラスの開発検討も中断した。中部地方などに集積する部品各社も開発の行方を注視する。
徳田工業(岐阜県各務原市)の徳田泰昭社長は「すでにかなり投資をし、完成がいつか不安はある。1日も早い量産を期待している」と話す。「量産まで何とか耐え忍ぶしかない」と話すのは大起産業(三重県東員町)の内藤茂範社長だ。部品各社の頼りだったボーイング機も大幅な減産に入り、他の活路にも限界がある。内藤社長は「国には支援をお願いしたい」とも訴える。
一方、MSJを冷静に見るメーカーもある。小型のMSJは大型機より部品が小さく単価も安い。部品各社が潤うほどの生産の伸びは期待しにくい。「量産はやりたくない」とある経営者。別の経営者は「コストが厳しくても(従来の取引関係から)断れない。もっともボーイングの減産で、えり好みする余裕もない」と苦笑する。
防衛機や宇宙関連に力を入れる企業もある。難削材加工が得意な熱田起業(名古屋市中川区)もその1社。部品を一貫生産するMSJの1次サプライヤーを目指し11年に現本社工場を新築。試験機に同社の加工品が搭載された。
しかし量産時の管理システムは大手しか維持できないと判断し方針を転換。現在は航空宇宙の研究開発関連で、一品モノの難加工に軸足を置き、受注を伸ばしている。
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日刊工業新聞2020年6月18日の記事を加筆・修正