ニュースイッチ

セブンイレブンが「がん保険」。業界初、生保販売の勝算

セブン―イレブン・ジャパンが16日からがん保険を販売する。1日単位の自動車保険や4月に東京都で加入が義務付けられた自転車保険など損害保険商品は販売していたが、生保商品の取り扱いはコンビニ業界初だ。今後、コンビニで生保商品に加入する「ニューノーマル」(新常態)が根付くかが注目される。(取材・増重直樹)

全国2万店舗以上で三井住友海上あいおい生命保険のがん保険を販売する。手続きには店内に設置しているマルチコピー機を使用。出力した保険料払込票をレジに提出し、保険料充当金を支払えば非対面で加入が終わる。生保商品の取り扱いは数年前から検討済みで、コロナ禍に伴う販売の前倒しなどは実施していないという。

年間6万人の契約目標で、想定顧客は主に3分類。コンビニで加入できる損保商品になじみがある20代の若年層、働き盛りで家庭の大黒柱の役割が大きくなる20代後半から40代前半、そして疾病リスクを現実的に直視する50―60代だ。ただ、非対面の加入はネット型生保を使う方法がすでにあり、線引きが難しい。

その答えとして両社が挙げるキーワードが“安心感”だ。セブン―イレブン・ジャパンの担当者は「日々ご利用いただいている店舗の安心感に加え、24時間365日相談できる専用フリーダイヤルを設けている」と話す。三井住友海上あいおい生命の担当者も「店内で取り扱っているのはセブンイレブンが良いと認めた商品。安心感がある」と説明。従来の対面販売を嫌煙する層の潜在的な需要の掘り起こしも見込む。

生保商品は基本的に契約期間が長期で、充実した保障を準備しようと思えば保険料も高額になる。対面営業のスタイルであれば、営業職員が顧客の年齢やライフイベントの変化などに合わせてリスクを啓発し、ハードルの高い保険加入の背中を押すこともできる。

セブン―イレブン・ジャパンは店頭パンフレットやホームページで商品を告知するが、能動的に加入する層がどの程度存在するかは分からない。ただ、現在取り扱っている損保4商品の2019年度の合計販売件数は180万件超。今後、新たな販売チャネルの一つとして定着するかが焦点になる。

日刊工業新聞2020年6月16日

編集部のおすすめ