クラウドファンディングの印象が変わる!中小企業の資本力を補強する「ファンド型」とは?
クラウドファンディング(クラファン)が盛んだ。インターネットで情報を発信して共感した人から資金を獲得する手法が、社会に貢献した人たちの思いと合致しているからだ。ミュージックセキュリティーズ(東京都千代田区)は2000年、大手制作会社に所属しないアーティストのCD制作費をファンから集める事業で創業した。クラファンの先駆けだ。
06年、酒蔵からの依頼をきっかけに音楽以外の分野に踏み出した。酒蔵は銀行から流行の酒を造ってほしいと言われていた。銀行は融資回収のために安定して売れる酒を望んでいた。一方、酒蔵はこだわりの酒も愛好家に届けたいと思っていた。ミュージックセキュリティーズの小松真実社長は「アーティストとファンの思いをマッチングしてきた。日本酒でもできる」と思い、個人が好みの酒蔵を支援するファンドを立ち上げた。
その後、飲食や農業分野でもファンドを組成した。「作り手にはとんがったモノを作りたい思いがある。金融的なモノサシ以外の評価がある」(小松社長)と実感したという。
【震災が転機】
11年の東日本大震災後も転機だった。クラファンで集めた資金の半分を寄付、半分を投資するファンドを始めた。個人は支援する企業などを選び、寄付で復興初期を支え、その後10年間は投資家として応援して配当を得る。岩手県陸前高田市のしょうゆ会社もファンドの支援を受け、工場再建を果たした。
現在、続々と登場するクラファンは出資者に商品を買ってもらうので「ネット通販」に近い。ミュージックセキュリティーズのファンド型クラファンは「個人と企業が長期間、関係を維持できる」(同)。経済的リターンだけを求めるファンドとも違い、社会にも貢献できる。
【地方創生に一役】
ファンド型クラファンは地方創生とも相性が良い。同社の手法なら個人などの小口出資で、中小企業も資金を調達できる。金融界にも受け入れられ、地銀80行と提携するまでになった。2月には九州フィナンシャルグループなどと地域企業の成長を後押しする合弁会社を設立。5月には地方活性化に取り組むミクシィとの資本業務提携も決めた。
19年の大阪での主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、持続可能な開発目標(SDGs)達成のために民間資金を動員する革新的手法が必要と首脳宣言に盛り込まれた。小松社長は事業で「SDGsが目指す未来と、現状とのギャップを埋める」と確信する。