来春採用“影響なし”の製薬業界、定着化するオンライン面接
製薬業界による2021年度の新卒採用計画が堅調だ。新型コロナウイルス感染拡大を理由に計画の変更は行わず、20年度並みや増員を計画する企業が目立つ。減員の企業も事業計画に沿った形で陣容を調整する。他方、採用活動は新型コロナの影響を受け、最終面接までオンラインでの実施を予定する企業が多い。国内の感染者は減少傾向にあるものの、第2波などの行方によっては“就活”がさらに窮屈になりかねない。
倍増を予定
エーザイは21年度の新卒採用を約200人(20年度実績は129人)と増加を見込む。新製品・主力製品の販売拡大や、神経・がん領域の研究開発を進展させる狙いだ。大日本住友製薬も21年度計画が70人(同35人)と倍増を予定する。
20年度並みの新卒採用を維持する企業も少なくない。中外製薬と協和キリン、小野薬品工業はコロナ禍も採用計画に変更はなく、中外製薬は21年度に約100人(同98人)を確保。協和キリンは87人(同81人)を採用し、小野薬品は20年度実績の73人並みの採用を計画する。
塩野義製薬は21年度計画が80人(20年度94人)と微減だが、専門性を持つ人材獲得のため中途採用の比率が高くなる見通しだ。
第一三共とアステラス製薬は新卒採用の増減を非公開としたが、いずれも採用計画に新型コロナの影響はないという。採用数を未定とする田辺三菱製薬も新型コロナの影響はないとしている。
一方、武田薬品工業は21年度計画が22人(同49人)と新卒採用人数を減らす。すでに決まっている同社の人員計画に沿ったもので、通常の増減の範囲内としている。
採用活動激変
新型コロナは採用計画に大きな影響を及ぼさなかったものの、採用活動を大きく変えた。武田薬品や中外製薬、協和キリンなどは、最終面接まですべての面接をオンライン化する予定だ。
協和キリンなどは合同説明会や自社開催セミナーも、全てオンラインに変更。しかしオンライン化で情報発信が一方通行になることで、学生の企業理解が十分に得られない可能性がある。こうした課題に「内々定後と入社後にギャップがないようフォローが必要」(協和キリン担当者)としている。
製薬業界全体では、21年度の新卒採用計画に新型コロナの影響は少ない傾向にあり、事業計画に沿った増減にとどまる。しかし感染第2波、第3波の先行きは見通しにくく、いつまでも学生と実際に対面できない懸念に加え、22年度の新卒採用計画の行方も不透明感が増す。
医療機器、見直しの企業も
医療機器業界では、新型コロナウイルス感染症の影響により、2021年度新卒採用計画を見直す企業が出ている。オリンパスは21年度の採用予定人数を未定とし、新型コロナの影響で「採用数の見直しが必要とみている」(武田睦史最高財務責任者)。同社は採用活動で面接を全てオンラインに切り替えているが、感染症の影響は採用計画にも及ぶ。20年度の採用実績は同社単体で技術系58人だった。
一方、テルモのように21年度新卒採用を当初の計画通りとする企業も医療機器業界で少なくない。ただ多くの企業と同様、説明会や面接をオンラインに切り替えるなど採用活動に新型コロナの影響が出ている。