地方自治体のDXはコロナ禍でようやく進展する?
情報サービス各社が新型コロナウイルス感染症対策に追われる地方自治体のデジタル変革(DX)を促すサービスを相次ぎ無償提供している。トッパン・フォームズは2日から、非接触で本人確認ができるシステムを提供。NTTデータは特別定額給付金の支給業務を効率化する人工知能(AI)を用いた光学式文字読み取り装置(OCR)を提供している。無償提供により「3密」を回避しながら業務を効率化できるITシステムの機能を理解してもらい、継続利用につなげる。
【真贋判定8秒】
トッパン・フォームズの「パシッドスキャン」は、読み取り機に本人確認書類を入れると約8秒で両面の読み取りと高精度な真贋(しんがん)判定が可能。目視の確認やコピーといった人手の作業と比べて作業時間を5分の1以上短縮でき、確認履歴のデータ化もできる。
住人が運転免許証などを自分で差し込めるように窓口へ設置すれば、職員への手渡しが不要になり感染機会を減らせる。読み取り機の大きさは縦55ミリ×横125ミリ×奥行き145ミリメートル。全国1741自治体を対象に各1台の提供を予定。受付期間は30日まで。
トッパン・フォームズによると、特別定額給付金の申請や審査の支援など、職員の負担軽減につながるサービスへの問い合わせが増えている。同時に、通常業務についても効率化や自動化、ペーパレス化などの相談が増加傾向にあるという。
【支給を効率化】
NTTデータは7月31日まで、特別定額給付金の支給業務を行う地方公共団体向けに紙資料をデジタルデータ化するAI―OCRサービスとRPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)、RPAのeラーニングを無償提供している。AI―OCRによる紙の申請書のテキストデータ変換、RPAによるシステムへのデータ入力のほか、支給審査チェック、振り込みデータ作成を自動化できる。
ヤフーは都道府県や政令指定都市向けに2021年3月末まで、同社のビッグデータ(大量データ)をブラウザー上で調査・分析できるツール「DSインサイト」の無償提供を行っている。同ツールの活用により、最新の住民の検索傾向から住民の不安やニーズを発掘したり、地域内の人流データから外出自粛要請の効果を測定できたりできる。
【RPA低水準】
総務省の調査によると、AIを1業務でも導入済みの自治体の割合(18年11月時点)は指定都市で60%に達した一方で、都道府県レベルでは36・2%、その他の市区町村は4・5%にとどまる。RPAについては全項目で50%に届かない状況だ。「新たな生活様式」に対応するためにも、自治体のデジタル化は一層避けては通れない課題となる。