なぜヤクルトの助っ人は“アタリ”が多いのか?
今年は「ロマン―オンドルセク―バーネット」の史上最強救援トリオ!?
東京ヤクルトスワローズが昨シーズンの最下位から優勝した。山田哲人など攻撃のヒーローが登場したが、予想以上に効いていたのは、外国人の救援陣。今季加入したオンドルセクは次第に調子を上げ、セットアッパーとして活躍。来日1年目の外国人投手としては最多登板記録を更新した。昨季は故障がちだったバーネットも奮起、球団記録を更新する40セーブの大活躍。ロマンも好調で、「ロマン―オンドルセク―バーネット」の外国人3人に勝ち試合の終盤を任せることで、試合運びに安定感が出てた。
「彼はウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッターか?」。
長年、日本のプロ野球で外国人のスカウトに携わってきた著者はメジャーリーグやマイナーリーグの視察でまずこう質問するという。メジャーでは打球が外野のフェンス直前で失速するフライのことを「ウォーニング・トラック・フライ」と呼ぶ。つまり、「ウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッター」とは、フェンス際まで打球を飛ばせる力はあるが、オーバーフェンスには少し足りないバッターを揶揄する表現だ。
フェンスを越えないバッターになぜ注目するのか。
メジャーの球場は日本に比べて広い。ピッチャーが投げる球も時速145キロメートル前後の日本に比べて、2メートル前後の大男が160キロメートルの球を投げ込んでくる。球質も重い。環境差を考えれば、米国では「ウォーニング・トラック・フライ・ボール」を連発している打者でも日本では、スタンドに届くのではないか。
著者の仮説を証明したのが、外国人としては日本球界初の2000本安打を達成したアレックス・ラミレス(ヤクルト→巨人→DeNA)であり、本塁打王に二度輝いたロベルト・ペタジーニ(ヤクルト→巨人→ソフトバンク)である。
本書は東京ヤクルトスワローズで長年スカウトを務めてきた著者が選手獲得のノウハウの極意を選手とのエピソードを交えながら紹介している。パワーは十分か、メンタルに問題ないか、細かな判断基準を用いて、日本で通用する選手、しない選手を見極めていることがわかる。
素人からすれば、「ウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッターがこれだけ活躍するのならばフェンスを越えるバッターを呼んでくれば、大成功するのでは」と考えてしまうが、それが間違いであることは歴史が証明している。古くはデーブ・ジョンソン(元巨人)から最近ではケビン・ユーキリス(元楽天)まで、メジャーでの実績は十分ながらも期待外れに終わった助っ人は少なくない。
ハングリーさの有無やメジャーリーガーならではのプライドの高さが活躍を邪魔するだけでなく、バッティングスタイルの影響も我々が思うよりも大きい。98年にシーズン70本を放ち世界記録を更新したマグワイヤはボールを叩く位置の問題から、日本で通用しないというのはスカウトの間では定説だったという。
考えてみれば、海を渡った日本人選手も前評判通りの活躍をした者もいれば、期待はずれに終わった者もいる。誰もが予想しなかった活躍をした選手もいる。環境が変わったことで、自らのスキルが違う形で活きることは少なくない。
野球選手だけではない。慣れない職場でも環境適応を心がければ、あなたの意外なスキルが光り、職場の「助っ人」になれる日は遠くはないかもしれない。
(文=栗下直也)
『プロ野球 最強の助っ人論』を読み解く
「彼はウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッターか?」。
長年、日本のプロ野球で外国人のスカウトに携わってきた著者はメジャーリーグやマイナーリーグの視察でまずこう質問するという。メジャーでは打球が外野のフェンス直前で失速するフライのことを「ウォーニング・トラック・フライ」と呼ぶ。つまり、「ウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッター」とは、フェンス際まで打球を飛ばせる力はあるが、オーバーフェンスには少し足りないバッターを揶揄する表現だ。
フェンスを越えないバッターになぜ注目するのか。
メジャーの球場は日本に比べて広い。ピッチャーが投げる球も時速145キロメートル前後の日本に比べて、2メートル前後の大男が160キロメートルの球を投げ込んでくる。球質も重い。環境差を考えれば、米国では「ウォーニング・トラック・フライ・ボール」を連発している打者でも日本では、スタンドに届くのではないか。
著者の仮説を証明したのが、外国人としては日本球界初の2000本安打を達成したアレックス・ラミレス(ヤクルト→巨人→DeNA)であり、本塁打王に二度輝いたロベルト・ペタジーニ(ヤクルト→巨人→ソフトバンク)である。
本書は東京ヤクルトスワローズで長年スカウトを務めてきた著者が選手獲得のノウハウの極意を選手とのエピソードを交えながら紹介している。パワーは十分か、メンタルに問題ないか、細かな判断基準を用いて、日本で通用する選手、しない選手を見極めていることがわかる。
素人からすれば、「ウォーニング・トラック・フライ・ボール・ヒッターがこれだけ活躍するのならばフェンスを越えるバッターを呼んでくれば、大成功するのでは」と考えてしまうが、それが間違いであることは歴史が証明している。古くはデーブ・ジョンソン(元巨人)から最近ではケビン・ユーキリス(元楽天)まで、メジャーでの実績は十分ながらも期待外れに終わった助っ人は少なくない。
ハングリーさの有無やメジャーリーガーならではのプライドの高さが活躍を邪魔するだけでなく、バッティングスタイルの影響も我々が思うよりも大きい。98年にシーズン70本を放ち世界記録を更新したマグワイヤはボールを叩く位置の問題から、日本で通用しないというのはスカウトの間では定説だったという。
考えてみれば、海を渡った日本人選手も前評判通りの活躍をした者もいれば、期待はずれに終わった者もいる。誰もが予想しなかった活躍をした選手もいる。環境が変わったことで、自らのスキルが違う形で活きることは少なくない。
野球選手だけではない。慣れない職場でも環境適応を心がければ、あなたの意外なスキルが光り、職場の「助っ人」になれる日は遠くはないかもしれない。
(文=栗下直也)