切削工具のコーティングビジネスのチャンスを掴む!OSG、インドに合弁会社設立
「車の電動化で部品の軽量化が進み、素材も変わる。高付加価値なコーティングビジネスのチャンスは必ずある」と、OSGの石川則男社長は確信する。同社はトップシェアのタップのほか、ドリルやエンドミルを製造・販売する切削工具メーカー。被膜の研究開発も行う技術力を強みに、自社製品のほか他社製品にもコーティングを行う“ジョブコーティング”サービスの世界展開を加速させる。
【即納体制を整備】
インド、デカン高原に位置するマハーラーシュトラ州プネー。同社は現地の表面処理企業と折半出資で、コーティング専業の合弁会社「プリムコートPVDテクノロジー・インディア」を設立した。工場の面積は約1000平方メートル。投資額は約2億6000万円。切削工具中心に物理気相成長・物理蒸着(PVD)コーティングのサービスを展開する。窒化チタンコーティングや窒化チタンアルミニウムコーティングのほか、顧客の要望に応じ柔軟なコーティングサービスを行う。顧客から受け取った後、24時間以内に配送する即納体制も整えた。
「インドには工具の町がある」(石川社長)というほど中小の切削工具メーカーがひしめく。OSGのプロジェクトチームがコーティング需要を市場調査したところ、その多くが集中するのがプネーとベンガルールだった。製造するのはハイス鋼のタップやドリルなど付加価値の低い工具で、バイクで仕入れ、売りに行く行商型。大量の工具が低価格で売られているが、難しいコーティングができる企業はほとんどない。
【対面型で差別化】
同社はプネーの別の場所でドリルやドリルの特殊品を生産しているが、新会社では自社製品以外のコーティングの受託事業を本格化する。顧客ニーズにきめ細かく応える「対面型」の事業展開で差別化を図る考えだ。現在は新型コロナウイルスの影響で工場は休止中だが、「インド市場の将来性は間違いない。新型コロナが収束した後、インド経済が再び成長するためには、海外から投資した企業に対しても理解されるようなルールや環境づくりがなされることに期待したい」(同)と訴える。
切削工具の寿命延長や、加工の効率化につながるコーティング需要は中長期的に見れば拡大が見込まれる。工作機械の高性能化が進めば切削工具も高能率型が求められる。また、好況時に設備を増強したくても簡単に増やせない時に「増産するには工具をアップグレードするのが一番早い」(同)と強調する。
【海外拠点を拡大】
ジョブコーティングは自社の設備稼働率の向上にもつながり、工具の販売が低調な時は売り上げの減少をカバーできる。同社はコーティング業強化のため、2019年に新城工場(愛知県新城市)内のオーエスジーコーティングサービスのコーティング設備を増強した。群馬県太田市と兵庫県明石市にもコーティングのサテライト工場を持つ。海外では米国やメキシコ、ブラジル、台湾などでジョブコーティングに取り組んでおり、今後拠点を拡大していく方針だ。(名古屋・田中弥生)