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明治26年創業、民間初のハカリメーカーが見据えるアフターコロナ

石田隆英社長インタビュー

新型コロナウイルス感染拡大の抑制に向けた外出自粛やテレワークの拡大で、自宅での巣ごもり需要が増えている。食品工場やスーパーは食料品など生活必需品の安定供給に務め、関連機器メーカーも対応に追われる。創業127年の老舗で過去の多くの苦難を乗り越えてきた食品業界向け包装・計量機器世界大手イシダ(京都市左京区)の5代目社長、石田隆英社長に現況とアフターコロナを見据えた取り組みを聞いた。

―新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るっています。

「新型コロナ、東日本大震災など、ここ10年で我々は大きな災いを経験している。だがイシダの歩みを振り返ると日清戦争、日露戦争、第2次世界大戦を生き残ってきた。特に第2次世界大戦下では、国による金属類回収で材料がない中、紙とベニヤ板でハカリを作ってしのいだという。食べ物に困り、空襲にさらされ、今より困難な時に先人たちは創意工夫で知恵を絞り、たくましく生きていて見習いたい」

―食品業界向け機器事業の足元の状況は。

「冷凍食品、加工食品、即席麺、野菜をはじめ、家で食べる人が増え、顧客の食品工場が増産していて堅調だ。スーパー向けも同様で人手不足対応の省人化、無人化機器に需要がある。海外は国・地域でまだら模様だが、英国が意外と忙しいなど、スーパーに人が押し寄せる状況は世界共通だ」
「4月の売上高は前年同月比プラス見込みで、1―3月の受注が反映される4―6月期は前年同期を超える予想。移動制限で従来型営業ができず、部品調達も一部で厳しいものがあり、7―9月期は懸念もあるが、ここが踏ん張りどころ」

―この危機的状況をどう生かしますか。

「営業はテレワークをフル活用する。世界規模で、平時も導入して働き方改革を進める。当社から顧客にテレワークの提案をしづらかったので良い機会だ。包装や計量、検査機器はこれまで提案してきた人手不足対応の無人化、省人化の延長線上。人との接触を減らす少人数オペレーションのニーズに応える。機器の遠隔診断や調整なども推進する。市場獲得や事業拡大に向けたM&A(合併・買収)を検討中で、ハカリを軸に周辺機器を含むトータルシステム提案を加速する」

イシダ社長・石田隆英 氏

【記者の目/「コロナ後」見据えて先手】

コロナ禍の収束時期が見えず、戦後初の行動制限に直面し、社会全体に重苦しい雰囲気が漂う。およそ100年前に人類を襲ったスペイン風邪、先の大戦をはじめとする戦禍に匹敵する変化と捉える向きもあるが、これらを乗り越えてきた老舗企業はアフターコロナを見据えて動きだしている。歴史を持つ老舗企業から学ぶべきことは多い。(京都編集委員・松中康雄)

日刊工業新聞2020年5月15日

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