ニュースイッチ

「データサイエンティスト」不足度調査、企業にとってどれほど貴重な存在?

7割の企業がゼロ、6割の企業が目標人数を確保できず

企業が求めるデータサイエンティスト(分析官)の人材像とは―。データサイエンティスト協会の調査によると、求められるデータサイエンティスト(DS)とは「データによるビジネス課題解決を得意とする人材」が最も多いことが分かった。ただ、DS需要が高まる一方で、DS採用予定企業の58%が「目標としていた人数を確保できていない」などのミスマッチの状況も明らかとなった。

企業におけるDSの在籍状況や採用実態などを定量的に把握したデータはこれまでなかった。データサイエンティスト協会によると「DSに対する企業のニーズを感覚ではなく、“データ”として初めて把握した本格的な調査」(塩崎潤一調査・研究委員会委員長)と位置づけている。

対象は国内企業の人事部門。従業員30人以上の企業をランダムに抽出し、283社の有効回答を得た。

調査ではDSの在籍者数を尋ねたところ、「1人以上在籍している」との回答は全体の29%となり、内訳は「1―2人」が22%、「3―5人」が26%、「6―10人」が22%となった。DSを増員予定の企業に対して、今後3年間でのタイプ別の増員数を尋ね、各社のタイプ別人数比率の平均値を算出した。結果として「データエンジニア」タイプ(43%)が最も多く、次いで「データマーケター」タイプ(33%)、「データアナリスト」タイプ(24%)となった。

DS人材像としては「ビジネス課題解決」「戦略検討」スキルを持つ人材が多く、また、DSを採用しようとした企業のうち、目標としていた人数を確保できなかった企業が58%に上っている実態が確認された。

今後3年間でDSを何人程度増やすかについては、DS在籍企業の77%が増員予定と回答した。現在DSがいない企業でも11%は新規獲得を予定していることが分かった。

DSの需要は今後も拡大傾向にあり、「需給のギャップを埋めていくことが大きな課題である」(データサイエンティスト協会)としている。

塩崎調査・研究委員会委員長は「DSは企業にとって特別な存在ではなく、システムエンジニアやマーケターなどのように、必須の人材になってきている」と指摘。これを踏まえ、「今後も分析できるデータが拡大し、一般の人でもデータが分析できるようになる“データサイエンスの民主化”が進むことで、この傾向はさらに強まっていく」とコメントした。

日刊工業新聞2020年5月11日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日本国内で約25万人のDSが不足するとの試算もかつてありましたが状況は大きく変わっていません。需要の急拡大に供給が比例して追いつくことはありえず、経営資源が限られる企業では本業がDSでない人でもモデルをつくれるツールやサービスを利用した対応が現実的に映ります。

編集部のおすすめ