4年で310倍!ESG投資はどこまで膨らむのか
環境や社会への配慮を基準に企業を評価するESG(環境・社会・企業統治)投資が広がっている。国際団体「グローバルサステナブルインベストメントアライアンス」によると2018年の日本のESG投資残高は2兆ドルとなり、14年比310倍に急増した。またESG環境省の19年の調査では全国の金融機関の92%がESGを認識していた。急速に浸透し、投資家もESG評価の眼力を磨いている。
ESG情報は業績や経営計画の「財務情報」と区別し、「非財務情報」と呼ばれる。本業を通した社会課題の解決など、売上高や市場シェアだけでは評価しきれない企業価値を知る情報源だ。
投資家はESGがしっかりしている企業を将来の環境規制に対応でき、風通しが良くて不正の恐れが少なく、持続的に成長する力を備えていると評価する。短期利益の追求が招いた08年の世界経済危機の反省から、年金を運用する機関投資家を中心にESGを重視するようになった。企業にとっては、業績以外で将来性を評価してもらえるチャンスだ。
企業側も情報開示の体制を整えている。18年、J・フロントリテイリングがESG推進部、三井化学がESG推進室と、「ESG」を冠した部署を先駆けて設置。三菱商事は情報を網羅した「ESGデータブック」を公開した。最近ではESGに特化したアナリスト説明会を開く企業も増えている。
機関投資家のニッセイアセットマネジメント(東京都千代田区)は企業のESGを分析して中長期業績を予測し、投資判断に活用している。10年以上の蓄積があり、環境省主催の第1回ESGファイナンス・アワードで金賞に選ばれた。
同社の井口譲二チーフ・コーポレート・ガバナンス・オフィサーは「アナリストはESGの観点から企業の持続成長性を分析するため、ESGにおいて高評価企業は、高い売上高や利益改善を予想する傾向がある」と語る。つまりESGに優れた企業ほど業績向上が見込め、株価上昇が期待できる。
また「業種によってESGの重要度が違う」と指摘する。例えば医薬品やサービス業では、S(社会)の情報が評価に影響しやすい。経営理念や人材を重視する業種であり、低賃金・長時間労働の職場であれば離職率が高く、優秀な人材が定着しないため持続的な成長は望めない。従業員の不満は不正の温床となり、株価急落のリスクもある。逆に従業員の意欲向上につながる「働き方改革」に取り組み、情報開示すると投資家から評価される。
石炭・石油、金属、繊維など二酸化炭素(CO2)排出量が多い業種は、E(環境)の情報が評価に大きな影響を与える。またG(企業統治)は、どの業種にも共通して重要だ。ESGは幅が広く「どこに注力するか、決めるべきだ」と助言する。取り組みをアピールする余力がない中堅企業でも、ESG評価が高い会社は存在する。「まずは自社のホームページでESG情報を開示しておこう」と促す。